海外での成功はそんなに甘くない。岡崎慎司がプロ目指す若者達に伝える処世術「トップレベルとの距離がわかってない」
「こだわりって大事で、例えばパスの練習一つとっても…」
どんな環境で過ごしてきたのか、どんな環境で過ごそうとしているのか。どんな目標を掲げ、そのためにどのようなステップを見定め、そのためにどんな取り組みを自分に課して、どのくらいの熱量で取り組めているのか。そこがあいまいなままだと、ブレイクスルーを果たすことはできない。日本にいたときから自分自身に矢印を向けられていない選手は、海外に行っても状況は変わらない。岡崎は続ける。 「自分を見て、周りと比べて、自分の立ち位置を明確にして、うまくなっていかなきゃいけない。そうした明確な基準がトップレベルの選手たちにはみんなしっかりあるんですけど、それができていない、わかっていない子が多いような気がするんですよね。なぜトップレベルの選手は厳しい競争の中で生き延びてきているのか? 何ができていて、どんな取り組みをしたから、彼らは上まで行ったのかっていうのを同世代からすらも学んでない。試合の中で流れを理解して、予測して、そこでどんなプレーをしたらいいのかを必死で考えたりとか、単純にすべての面に対して本気度とか、競争への思いが足りてないですよね」 岡崎が「まだまだ全然がむしゃらでもないと思う」と苦言を呈するのは、そうした自分との向き合い方、時間の使い方が適当だからだ。体を壊してまでやり続けることを進言しているわけではない。体も頭も適切な休息を取らなければ成長しない。苦しいことばかりやっていては心がつぶれてしまう。気分転換の時間、リフレッシュする機会は間違いなく必要だ。ただそれをどのくらいの頻度で、どのくらいの割合で、どのタイミングで、どのようにとるのかを、本気で考えて取り組んでいるかが問われるわけだ。ドイツに来ていて空いた時間があるなら、ドイツ語を学んだり、専門的な分野の研修を受けたりすることもできるはずなのだ。 「こだわりって大事で、例えばパスの練習一つとっても、シンプルなパスのトレーニングをしているはずなのに、ちょっと誰かのパスがずれると、もうどんどんずれていく。ああいうの一つ取っても、意識を変えていかないといけない。なんでずれちゃうのかを考えてない。トレーニング中の一つのトラップに対して、なんでここにトラップしているのかっていう意図を考え抜かなければいかない」