「ゴジラ-1.0」の米国ヒットは歴史の第一歩だった【野島達司】│聞き手:髙比良くるま&シャラ ラジマ
山崎貴の席の裏にあった張り紙
野島:全然狙ってなかったですね。誰も予想してなかったです。音響チームのマスターのMAの部屋で、山崎さんの席の裏に「世界が待ってる」っていう謎の習字が張ってあったらしくて、それに気付くまでは監督も世界が待ってることなんて何も考えてなかったらしいです。 シャラ:(笑)それ誰が書いたんですか? 野島:音響チームのみんなが(笑)世界の音をつくってたらしいです。 ■お金があればグローバルで勝てるのか 髙比良:実際このヒットを受けて、これから海外にいこうっていう気持ちになりましたか? 野島:全然いけちゃったらいいなと思うんですけど、恐怖が大きいですね。日本の今までのクオリティでは全然太刀打ちできないので。やっぱり絵のクオリティとか、最終的な品質が全然違うなと思っちゃって。 髙比良:お金かければできるとかじゃないんですかね?。 野島:かけたことないから僕も謎なんですよ。業界内でも、お金があればできるっていう派とできないかもしれない派がいます。 髙比良:できないかもしれないというのは、どういう理由で? 野島:やっぱり技量ですよね。ハリウッドって神様扱いされるようなめちゃくちゃ上手い人がいて、そういう人たちの下で成り立っていると思うんですよ。僕も見てきてるわけじゃないんですけど、何かそういうものを感じるというか。すごい人が率いて、こういう絵づくりをしてるんじゃないかって。誰にでもできることじゃないと思うんですよね。 髙比良:海外の作品とかで、この人すごいなっていうのとかあるんですか? 野島:エフェクトで言うと、ミゲルさん(Miguel Perez Senent)っていうエフェクトアーティストの方がいて、その方はすごいですね。最近までメガリスっていう日本の会社にいたんですけど、今はインダストリアル・ライト&マジックってとこにいます。そこは通称ILMって言って世界最強のスタジオで、スター・ウォーズとかほとんどのハリウッド映画がつくられてます。視覚効果の先駆者ですね。 髙比良:そこのミゲルさんが特にすごいということなんですね。 野島:はい、最近度肝抜かれるエフェクトが何本かハリウッド映画で出てて、これ誰がつくったんだろうって思ってたんですけど、それが全部同じ方の作品だったんですよ。 髙比良:それがミゲルさんだったんですね!野島さんもポストミゲルになれますよ。 シャラ:日本の映画をよくしていただきたい。 野島:そうですね、日本で何かできたらなとは思いますね。結構日本では業界的に諦めムードみたいなのが最近ちょっとあって。「上手い人は日本でくすぶってないではやくハリウッド行っちゃいなよ」みたいな。 ■最強のチーム「白組」で世界へ 髙比良:やっぱり野島さんも言われるんですか? 野島:言われますね。 髙比良:どう思うんですか? 野島:でもやっぱり荒波を乗りこなしたいというか、絶対沈まない鉄の完璧な船に乗るよりは、穴をみんなでふさいでいく方が達成感あるのかなって。 髙比良:なるほど。すごい仕事が好きって言ってたから、仲間みたいなところもあるんですかね。もうずっとこの白組にやっていきたいという気持ちなんですか? 野島:そうですね。最強のチームだと思ってるので。 髙比良:お~いいですね。そのチームで世界で勝負しようみたいなことは考えてるんですか? 野島:僕は勝負したいなとは思います。 シャラ:白組の中で一緒にどこまでいけるかっていうところなんですね。 野島:はい、なんとかしてたどり着ければいいですね。 髙比良:それがいいんですね。さっきのILMとかに入ってやるよりもやりがいがあると。 野島:そうですね。5年後には気が変わってるかもしれないけど、でも今はそんな気持ちです。 シャラ:今自分がいる場所をちゃんと一緒に連れて行きたいって気持ち、すごい共感できます。 髙比良:とにかく白組が好きな気持ちが伝わりました。今後もしかしたらアメリカのハリウッド作品に勝るようなものを皆さんでおつくりになるかもしれない、ということでよろしいでしょうかね? 野島:はい(笑)。