「1200万円」の預金がある70代男性に「生活保護」が適用されたワケ
ほかにもボヤを出したり、ゴミが家のなかからあふれ出たり、あるいは病気で倒れて病院に救急搬送されて初めて、認知症が判明するといった事例はめずらしくありません。 認知症患者は、症状を隠そうとすることも多く、特にひとり暮らしの高齢者の場合は、認知症が発覚するきっかけがなかなかないのが現状なのです。 いうまでもないことですが、認知症はお金に困っていない人でも教育水準が高い人でも発症する可能性があります。ひとり暮らしで日常的に他者との密な交流がない高齢者の場合、「周囲が気づかない間に認知症を発症していた」となるリスクを避けるのは難しいのです。 ● 認知機能が低下して 悪質な高額商品を買わされる 認知機能が低下した高齢者に多いのが、金銭管理の問題を抱えるケースです。 特に問題となるのは、必要以上の買い物です。たとえば冷蔵庫には食べかけの野菜やお肉がたくさん残っているのに、そのことを忘れて、スーパーで食料を大量に買い込んでしまうのです。 健康食品の定期購入サービスに申し込み、次々に届く商品が大量に自宅に溜まるといったこともよく起こります。テレビのコマーシャルを見て電話で注文したり、訪問販売ですすめられるままに契約したりするのです。 まったく利用しない商品の定期購入はすぐにやめるべきですが、ひとり暮らしの場合は止めてくれる人もいません。子どもがいる方でも、遠方に住んでいると、異変に気づいたときには手遅れということもあります。 昨今はクレジットカードなどで簡単に買い物ができ、定期購入サービスなども利用しやすくなっているため、こうしたトラブルはますます増えていくことが予想されます。高齢者本人だけでなく、家族も注意が必要です。 ほかにも、高額な商品を購入させられ、貯金を失うといったケースもあります。 長年のつき合いがあって信用している金融機関の担当者からすすめられ、商品をよく理解しないまま何百万という大金をリスクの高い金融商品に注ぎ込んでしまったりすることもあるようです。もちろん本人が「自分の意思で購入した」という場合もあり、被害と断定するのは難しいのですが、リスク許容度を大きく超えて多額の資金を投じてしまっているケースなどは消費者被害といってよいでしょう。 強引な訪問販売の被害にあったり、オレオレ詐欺にあうケースもあります。 認知症の場合、「認知機能が低下している」とはいえ、ある程度の判断力は残っているという方もたくさんいます。しかし、本人の意思決定を尊重するという理念だけで対応することが果たして正しいのか、周囲にとっても判断が難しい場面が続きます。
沢村香苗