成年後見制度は法定後見だけではないって本当ですか? FPが任意後見制度を解説
成年後見制度の種類は1つではありません。大きく分けて「法定後見」と「任意後見」があります。 成年後見制度の利用の実態として、法定後見制度の理由が多い状況ではありますが、法定後見は本人とまったく面識のない第三者に財産管理をされることもありえる制度です。第三者だからこそ公平性が保てるというメリットもありますが、自分の判断で認知症に備えられる任意後見制度を今回はご紹介します。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
任意後見制度はいきなり始まらない?
任意後見制度は成年後見制度の種類の1つと説明しましたが、認知症がすでに始まっている方では利用できません。ただ、「〇月〇日から認知症になった」という線引きはなかなかできませんから、目安としては、本人がしっかりと物事の判断ができ、契約書の内容が理解できる程度であれば利用は可能だと考えてください。 任意後見制度は、将来判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ後見人や後見内容について契約で定めます。ただ、認知症になる前に,任意後見の前段階のお仕事を依頼するという使い方ができます。 どのような内容を依頼するのかは本人しだいです。一般的な内容は、定期的な面談や行政機関への届け出など、本人から委任を受けた範囲内での仕事となりますが、疑問があれば、公証人連合会のホームページにもQ&Aが挙がっていますので参考になるでしょう。 法定後見制度では、すでに本人の判断能力に問題があるので、財産管理や契約内容の方針を一緒に決めることはできませんが、任意後見制度についてはご本人の希望を聞きつつ、カスタマイズした内容を契約事項に盛り込むことができ、判断能力が衰えるまでに備えることもできます。日常生活に支障が出て、いきなり始まる法定後見制度と異なるのです。
利用の流れ。公証役場での契約は必須となる
任意後見人になってもらう方や契約内容がおおよそ決まった後の、任意後見制度を利用する流れを見ていきましょう。 法定後見は「家庭裁判所に申し立てをする」準備から始めますが、任意後見制度はまったく進め方が異なります。任意後見制度の利用には、「任意後見契約を公正証書で作ること」が必須です。任意後見契約は、家庭裁判所が「任意後見監督人を選任」したときから効力が生じます。 ただ、認知症になる前から任意後見受任者として、契約内容に沿った仕事をして,定期的に様子を見る「移行型」の契約を結ぶことが一般的です。そうすると、前提として、任意後見契約が効力を発する前に、「委任契約」を結び、定期的なお付き合いを続けながら本人の判断能力を確認していくことができます。 公証役場以外の作成方法、たとえば任意後見になってくださる方と2人で2部ずつ手元に置くような契約書、もしくは口頭で、「なんかあった場合にはよろしく」と伝えるだけでは任意後見契約として認められません。任意後見契約公正証書の作成費用としては1万1000円、登記嘱託手数料1400円、登記所に納付する印紙代2600円などがかかります。 遺言書のように、財産の多寡で金額が変わるわけではありません。 ただ、後見人の費用も考慮しなくてはなりません。家庭裁判所が後見人の報酬を決定する法定後見とは異なり、任意後見の場合には、話し合って納得した金額を契約書に報酬として記載します。契約書を作成する時期から寿命などを考慮して、本人の財産で支払える金額を見積もる必要があるでしょう。