深夜も鳴りやまない「ナースコール」…「医師の働き方改革」に押し潰される看護師たちの悲鳴
鳴りやまないナースコールと看護師にのしかかる負担
ナースコールシステムは進化を続けているものの、現場ではいくつかの問題が残っています。特にナースコールの集中による看護師の過重労働は深刻です。 患者はいつでも簡単にコールをかけることができるため、夜中でも頻繁に呼び出しがあり、コールの洪水状態になっています。また、すべてのコールが看護師に届くため、どのような内容のコールであっても、その都度看護師が対応しなければなりません。これでは看護師の過重労働はなかなか解消されないでしょう。 たとえば「特定の患者からのコールは担当看護師にだけ通知する」といったシステムの設定変更により看護師一人ひとりの負担を軽減することはできそうです。技術的には可能ですが、実際は、シフトや勤務帯ごとに設定していくのは複雑であり、その都度の変更はあまり現実的ではないのです。 また、「何時何分に誰がコールしたか」「どのセンサーからコールが発生したか」といったデータを上手く活用することにより、無駄な労働を減らすことができるかもしれません。しかし現在は、データ活用の途上にあります。ナースコールのデータはほとんど活用されておらず、一部の病院の取り組みとして成功事例が学会などで報告されるくらいです。看護師の過重労働の解消に向けた今後の対策としても期待されるところです。
医師の働き方改革により看護師の負担増
いま、「医師以外の医療職をいかに支援するか」という課題が浮き彫りになっています。日本の医療現場では、2024年4月に施行された医師の働き方改革により医師の労働時間が厳しく制限され、特に時間外労働に対する規制が強化されました。 その結果、医師の業務量を削減するための「タスクシフト」が進められ、医師の業務の一部が他職種へと移行しています。しかし、その多くは看護師に割り当てられていて、看護師の負担が限界に近づいているといった状況が各所で見られます。 加えてポイントになるのが、看護師から看護助手や事務職へのタスクシフトが充分に進んでいない点です。看護師は専門的な知識と技能を持ち、患者ケアに強い責任感を抱えているため、看護助手への業務移行には心理的な抵抗を持つ場合もあります。一方、看護助手には医療行為が法的に許可されておらず、業務範囲の制限により、移行できる業務が限られているのです。 このような現状を改善するためには、ナースコールシステムの運用改善が鍵となります。これらの技術は、看護師が直接対応しなければならない業務を減らし、より専門的なケアに集中できる環境を整えることが可能です。逆の見方をすれば、ナースコールシステムによる業務効率化が進まなければ、医療現場は深刻な人手不足に直面し、地域によっては医療崩壊になりかねません。労働時間の上限規制にも対応しながら、現場の負担をどう分散させて、ケアの質を維持していくかが重要です。さらに、ナースコールシステムの運用改善もこうした関心のなかで行われるべきと考えます。