欧州のガス問題に見る「Me-first」と国際エネルギー秩序の動揺
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今冬、欧州では深刻なガス不足が発生し、まさに「エネルギー危機」に直面するのではないか、という懸念がこの秋口頃までは現実に存在していた。その象徴的な出来事は、8月末に記録した欧州ガス取引ハブ、TTFでの100万BTU(英国熱量単位)当たり約100ドルという、原油換算で1バレル当たり600ドル近い異常な暴騰であった。ロシアからの主力パイプライン、ノルドストリーム1の供給が大幅に低下し、その先行きに大きな不安が発生する中、欧州で深刻なガス不足が発生する、との懸念がこの暴騰をもたらしたのである。 しかし、その後、TTFでのガス価格は大きく低下し、最近では100万BTU当たり30ドル台後半の推移となっている。もちろん、この価格水準でも原油換算約200ドルの「高価格」ではあるが、ひところの異常な暴騰からは大きく低下したことも事実である。 なぜ価格が低下したのか、その背景として、欧州各国での死に物狂いの取組みが功を奏した面は見逃せない。ロシア産のガスを代替するため、昨年後半から欧州では 米国産 を中心にLNG(液化天然ガス)輸入を大幅に拡大してきた。今やEU(欧州連合)と英国を合わせた欧州は、中国と日本を抜いて世界最大のLNG輸入地域となっている。
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小山堅