北村有起哉「朝ドラヒロインの父役から、家に帰れば息子2人の父に。送り迎えや食器洗いが僕の担当。応援してくれた妻・高野志穂への感謝」
◆妻もかつては朝ドラヒロイン おかげで今はもう、七光りに反発して一人で頑張りたいというような野心はなくなってきました。それよりも、家族のために頑張りたいという気持ちのほうが強いかもしれません。 結婚して11年が経ち、10歳と4歳の息子がいますが、子どもの存在はやはり大きいです。彼らを養っていかなければという思いがある。 ただ、養っていればそれでいいというわけにはいきません。もはやそういう時代ではないですし、実際、「子育てって本当に大変だわ」と身に沁みてわかってきたんです。 妻(女優の高野志穂さん)は男兄弟がいなくて男の子の生態が理解できないらしく、「なんで靴にこんなに砂が入ってるの!」とか叫びまくっていて(笑)。僕もできる限りのことをしています。幼稚園や習いごとの送り迎え、一緒にお風呂に入る、寝かしつけ、食器洗いが主に僕の担当。 洗濯は、畳み方で妻に怒られたことがあったので僕はやらないほうがいいね、と遠慮していますが、自分ではかなり家事をやっているつもりです。おそらく妻から見ると足りないと思いますけど。(笑) 家族がそんな状況なので、大阪のNHKで撮影をする今回の話を受けるにあたっては、やはりまず妻に相談しました。「大阪と東京を行ったり来たりすることになる。でも、ヒロインのお父さん役なんだ」。そう言うと、妻は静かにうなずいてくれました。
妻もかつて『さくら』(2002年)という朝ドラでヒロインを経験しています。ヒロインの大変さとは比べ物にならないですが、今回の父親役はけっこう長く出番があるようなので、留守も長くなる。それでも僕がやりたいと思っている気持ちも理解してくれて、感謝しかないです。 撮影がないときは東京に戻って家族サービスをしていますが……いや、これもサービスと言ってはいけないですね(笑)。そのあたりのことはさんざん学んできました。 僕が妻の大変さをわかっていなくて、ぶつかったこともあります。さまざまなことを乗り越えてきたからこそ妻も、「行ってらっしゃい。頑張ってきてください」と送り出してくれるのでしょう。 若かりし頃の野望が実現し、50歳を迎えて次の野望とするべきは、今のペースをなるべく長く持続させる、ということ。 例えば、朝ドラに限らずいろんなお父さん役をやる。そうしているうちに今度は、いろんなおじいちゃん役をやるようになるでしょう。それには、できるだけお芝居の鮮度を落とさず面白いと思ってもらえるようにならないといけないし、人としてのあり方を大事にすることは忘れてはならない。 親父は80歳まで仕事をしていたので、少なくとも81歳まではやるぞという気持ちもあったりします(笑)。30年以上ありますから、まだまだ。いや、あっという間かもしれませんが、変わらず、地道に一段一段昇っていきたいと思います。 (構成=大内弓子、撮影=宅間國博)
北村有起哉
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