“はやった”っていう自覚がない、真ん中にいたこともない――back numberが語る「サブスクに向けていない音楽」
「水平線」はコロナ禍がなかったらできていない
1月17日、7枚目のオリジナルアルバムを発売したback number。前作のリリースは、2019年3月。その前月には、サブスクリプションでの楽曲配信を本格的に解禁している。この4年間で、「大きな変化を感じた」と3人は振り返る。 清水「レコード→カセットテープ→CDみたいな音楽メディアの変遷の一部分でしょうけど、サブスクがメインになったこの数年は、意識する部分が変わってきたと思いますね。『再生回数が計られるのに、6、7分もの長い曲を作るのが正解かどうか?』というような。あまり背を向けすぎてもいけないけど、迎合しすぎるのも……。本来、音楽なんてルールがないものであるはずなのに、本末転倒なのかなと思うこともあります。コロナも大きかった。音楽のあり方、見える角度、言葉の成り立ちまで全部変わったと思うので。自分たちなりの迷いが、全部入っています」 音楽シーンの変化だけではなく、人の気持ちや空気感にも別のものを感じる、と清水は続ける。 清水「映画や漫画の題材が、恋愛中心ではなくなっていると思います。それよりも『推し』の世界ですよね。自分たちが好きなアイドルやバンドの話がしやすくなった分、もうちょっと深い話は、逆にしづらくなっているのかな。作り手としては、そういう空気的なものから、影響を受けざるを得ない。だからといって、意識的に恋愛の曲を減らそうとは思わないです。ただ、『今はこれを歌うべきじゃないな』という時と、『これ、今だったらやれるかも』みたいな移り変わりは、以前よりもペースが速くなった気がします」
この4年の間は、あまり他のアーティストの音楽を聴かなかったという。最近になってヒット曲を聴くようになると、「浦島太郎になった気がした」。 清水「あ、そんなことになってんの?って(笑)。もう全然違うところにいるのね、という。もちろん、気にしないで作ってきたからこそ、できたものもある。俺らがはやりの音楽を聴こうが聴くまいが、この時代に生きて、聴く人たちとも同じ空気を吸っているんだから、きっと間違えていないんじゃないかな。それはたぶん、『水平線』という曲のおかげだと思うんです」 2020年に制作され、翌年8月にリリースされた「水平線」は、コロナ禍で開催中止となったインターハイをきっかけに書き下ろした楽曲。涙をのんだ高校生たちを中心に話題となり、MVは1億回以上、音楽ストリーミングでは3億回以上の再生回数を記録した。