「ボランティアに来るな」の議論が吹き荒れる中…震災後の能登で銭湯の復旧を続けた店主の「本音」
「銭湯戦士」たちの活躍
――銭湯ボランティアという組織は、銭湯を足がかりとしつつも、細やかな配慮で地域の方から求められるボランティア活動を行っているんですね。 そうなんですよ。銭湯ボランティアというよりは「銭湯戦士派遣ボランティア」って僕は言っています。 ――とりわけ銭湯の業務経験を持つ方が、プロとしてボランティアに入られるケースもあるんでしょうか。 ありますよ。もともと銭湯で掃除などを請け負っていた方が長期的に入ってくださったり、SNS等を通じて京都のゆとなみ社さんや東京の電気湯さんが定期的に行ってくださったりも。設備修繕などのノウハウを教えていただいたりしています。 ――今回の地震に関しては「被災地に安易にボランティアとして入るな」というメッセージが非常に多かったため、支援をためらわれた方も多かったと思います。こうした状況についてどんな印象を持たれますか。 発災直後の道路状況や町の状況ですと、たしかにボランティアどころではなかったですね。3ヵ月後ぐらいまでは本当に人命救助と物資の輸送、緊急車両だけがなるべく通れるように、一般の方は来るべきではないと正直、思っていました。 渋滞して自衛隊がなかなか来なかったり、救急車が通れなかったりすることもあったので。しかしそうした状況の報道もあったからでしょう、「さあボランティアさん来てください」となっても、あまり人が集まらない。どうしても地理的要因が絡むことなのですが。 これから珠洲市が落ち着いて、いざ復興に向かうぞという際には、これまでもどかしさを抱えてくださった方や思いのある方に、積極的に関わってもらえたら嬉しいです。 後編記事『「『彼ら』がやったことなんだから」…被災から1年・能登の銭湯店主が地域交流で見つめた「復興の重み」』に続く。 新谷健太(しんけん) 1991年生まれ、北海道北見市出身。金沢美術工芸大学卒業後、制作活動を行いながら2017年石川県珠洲市に移住。地域おこし協力隊として勤務後、ゲストハウスやコミュニティスペースなどを開業し、2023年「海浜あみだ湯」の運営責任者に。「令和6年能登半島地震」被災からわずか18日後に銭湯設備を復旧し、珠洲市市民のための無料開放を始めたほか、「銭湯ボランティア」を率いて地域のこまやかなニーズに応える活動を推進中。
森田 幸江