役職が上がると「耳の痛い意見」を聞かなくなる? 企業調査で傾向
出世して役職が上がるにつれ、部下を知る努力をしなくなり、耳の痛い意見にも耳を傾けなくなる――。民間企業が実施した調査から、こうした傾向が浮き彫りになった。調査を行った会社の担当者は「管理職は意識的に自分を客観視し、課題と向き合わなければ、自分自身、ひいては組織の成長を停滞させてしまう」と警鐘を鳴らしている。 調査は2024年5~7月、組織開発・人材育成支援のコンサルティングを行うALL DIFFERENT(オールディファレント)が、同社の管理職向け研修の受講者415人を対象に実施した。 1~3年目の課長クラスを「新任管理職」、4年目以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と分類し、それぞれの回答を集計した。 「管理職の役割を果たす中での課題を感じることがあるか」との設問では、「とてもよくある」「よくある」と回答した割合は、新任では79・1%、ベテランでは64・7%、幹部候補では53・0%となり、出世するにつれ課題を感じにくくなることが分かった。 また、「管理職の役割を果たすために行っている努力」についての設問(複数回答)では、「部下のことをよく観察する」は新任で53・6%、ベテランで45・7%、幹部候補で43・9%となり、こちらも徐々に数値が低下している。 努力の一環として「聞く力を強化する」は新任の53・6%に対し、ベテランは43・1%、幹部候補は40・9%。さらに「耳が痛い意見にも耳を傾ける」では、幹部候補は27・3%(新任34・5%、ベテラン31・9%)にとどまり、役職が高くなるにつれ、不都合な意見に耳を貸さなくなっていく傾向が浮かび上がった。 調査の担当者は「管理職は職位が上がるにつれて求められる役割がより多岐にわたっていき、『部下を知る』ことへの優先順位が相対的に下がりがちになる」と分析。「事業環境の変化が大きく、誰も正解が分からない業務が多くなっている中、部下の育成を直属の上司だけに任せるのではなく、さまざまな階層と継続的にコミュニケーションがとれる環境を企業が整備することが重要だ」と指摘している。【町野幸】