「葉を触れば栄養がわかる」長野・佐久穂町「のらくら農場」がたどり着いた「面白い農業」の作り方
葉っぱの手触りを確認する
完璧な土壌を作り上げたらゴールというわけにはいかない。作物は土の栄養を吸収して成長していく。次のシーズンになれば、また栄養のバランスが傾いているかもしれない。 そのため、のらくら農場では土壌分析と共に、作物の栄養価を診断するようになったという。堆肥の配合を考えながら、個々の作物にとってよりベストな土壌を作ることは、我々が口にした時の栄養価にも大きく寄与する。 この努力が実り、のらくら農場は先述の通り19年「オーガニック・エコフェスタ」開催の栄養価コンテストで総合グランプリを受賞している。 育てている間も、作物にきちんと栄養が行き渡っているのかどうかを随時確認している。これは生育診断と呼ばれるもので、こちらも個々の作物によってチェックするポイントは異なる。萩原さんはケールが並ぶ畑にしゃがみ、葉を撫でた。 「葉っぱの手触りや葉脈の走り方で、窒素成分やマンガン、マグネシウムなど、それぞれの栄養が行き渡っているかわかるんです。そのポイントは品種によって全然違います。 収穫して小分けにしている時や、あとはお昼ご飯に農場の野菜をみんなで食べるときも、生育診断のチャンスですね。『来年はもうちょっとこうしたほうがいいね』と改善点を洗い出しながらテイスティングしています」
「止めやすい」通販
のらくら農場の野菜は農協には出荷されていないが、有機野菜を取り扱うさまざまな取引先で購入することができる。都内にも販売店はあるが、オンラインで注文できる「有機栽培の野菜セット」が求めやすい。葉物野菜を中心に色とりどりの野菜が入っており、サイズはS~Lの3種類で、単発と定期の両方が選べる(詳しくはこちら)。 Lサイズであれば、約10種類ほどの野菜が送られてくる。この通販こそ、有機栽培で多品目を作るのらくら農場が、流通を試行錯誤した末のひとつの結果である。プライスタグ以外の競争がむずかしくなっている青果に、ひとつの「個性」が与えられる瞬間でもある。 「普段あまり買わない野菜を食べた感動をお客さまから伺うと嬉しいですね。春菊が苦手だったけど好きになったとか、子供があまり食べなかった野菜を食べた、とか。 段ボールのフタを開けた時に、喜んでもらえるようなセット作りを意識しています。時期やサイズにもよりますが、葉物だけでなく赤ピーマンやラディッシュなど、カラフルな野菜をできる限り入れられるようにしたいなと思っています。 これは余談かもしれませんが、のらくら農場の通販は『止めやすい』設計を心がけているんです。一度頼んでみたから、なんとなく申し訳なく、付き合いで、みたいなことになったら、お互いに損じゃないですか」 「生産者の顔が見える」という表現が使われるようになって久しいが、「消費者の声が聞こえる」ことも、農家にとって重要なことなのだ。