国産米を使った「米麺」の開発進む 国内農業の活性化も視野
ビーフンやフォーなどコメを主原料にしためんの市場は順調に拡大しているが、日本産のジャポニカ米は、めん同士がくっつきやすく原料米に適さないことから、タイやベトナムで生産される長粒種のインディカ米を使用している。だが、この市場で50%以上の圧倒的シェアを持つケンミン食品は、国産米を使ったビーフンにチャレンジ。年初に開発・研究を行う「ケンミン未来研究所」を、兵庫県丹波篠山市にある冷凍食品の基幹工場内に立ち上げた。
トップシェアのケンミン、ビーフンで挑戦
取組みの背景に、日本国内で近年、米粉製粉技術の進化やめんに適する原料米の品種開発が進んでいることがある。そこで高村祐輝社長は「70年以上にわたり、国内で唯一、自社製品の米めんを製造・販売する長年の技術やノウハウを生かし、日本米の生産と消費拡大に貢献したい」という思いがある。 わが国では近年、減り続けるコメ消費に歯止めを掛けるため、農林水産省が中心となり米粉を切り口にした多用途利用を推進し、その一環として消費量の大きいめんに注目している。同社も今回、農林水産省が実施した「令和4年度米粉利用拡大支援対策事業補助金のうち米粉商品開発等支援対策事業」で、国のバックアップを受けた。 すでに日本米を使ったメード・イン・ジャパンの米めんも誕生し、複数企業から発売されているが、前述のようにジャポニカ米は原料適正で劣るため、でんぷんなどの添加物を配合している商品が大部分を占める。 だが同社は創業以来、一部商品を除きコメと水のみを使用し、副原料は一切使用しない「コメ100%」にこだわってきた。今回開発した商品も同様で、流通する国産米使用のめんでは極めてまれなコメ100%を実現。秘訣は原料米や製粉方法などで、めんに最適な米粉が誕生したことにあるが、ただ今のところ、製造は手作業の域を出ず数量が限られるため、大手製粉企業から米粉を調達している。 製麺は既存品同様、押し出し式を採用し、蒸して押し出し機に通す。この工程を2回繰り返すことで気泡を消すとともに、米めんならではのツルっとしてコシの強い独特の食感を実現した。 生産量が限られるため一般販売はしておらず、直営レストランの「健民ダイニング」で汁ビーフンや和えビーフンに使用するのみとなっている。既存のタイ自社工場で生産するビーフンと比べ、独特の食感に加えコメの風味が強く、必ず注文するファンは育成されてきたという。 むろん、業界最大手企業として量産可能な製麺と製造システムの開発が、喫緊の課題であることは間違いない。高村社長は「タイ工場同様、製粉工程も内製化するとともに、めん好適米を近隣で生産し、製粉から製麺、販売まで一貫して取り組むことで、長年お世話になった兵庫県に農業活性化という恩返しがしたい」と夢は広がる。
日本食糧新聞社