映画『雨の中の慾情』は、“クセ強”ラブストーリーなのか?──成田凌主演で11月29日公開
心を震わす映画に化ける?
と同時に、『雨の中の慾情』が秀逸なのは、感情を刺激するドラマ面のうねりも連動していること。どこか滑稽で、時に戯画的なエッセンスを有していた義男・福子・伊守の印象が我々の生きる現実と接地し、切なさや愛おしさが一気に加速していくのだ。 つまり、物語・人物・世界観、ひいては作品全体の見え方が中盤以降に激変することで、好き勝手に暴れまくっていた作家性強めの作品がエンタメ性を宿し、急速に私たちに寄り添う「心を震わす映画」へと化ける。 その驚きを余すところなく体感してほしいため、ここで決定的な「解説」をできないのが心苦しくはあるが──定型&量産型の作品に飽き飽きしている観客にとっては、絶好の体験になることは間違いない。主演の成田にインタビューした際「こういう作品に出るためにこの仕事をやっている」と語っていたが、映画が持つ生命力をこれでもかと味わわせてくれるはずだ。
映画『雨の中の慾情』 売れない漫画家の義男は、貧しい北町に暮らしていた。ある日、自称小説家の伊守と共に引越しの手伝いに駆りだされた彼は、離婚して間もない福子に出会い、心を奪われる。その後まもなく義男の元に、伊守と福子が転がりこんできて奇妙な共同生活が始まる。 公開日:2024年11月29日(金) 出演:成田凌、中村映里子、森田剛、足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐薰、伊島空、李杏、竹中直人 監督・脚本:片山慎三 原作:つげ義春「雨の中の慾情」 ©2024 「雨の中の慾情」製作委員会 文・SYO 編集・神谷 晃(GQ)