4軒連続で“事故物件”に住む女性が「先入観にとらわれるあやうさを実感した」出来事
没入感を生む作り込みにこだわる
――お化け屋敷の企画制作は、クリエイティブな能力をかなり要求されると思いますが、この仕事の大変さは、どんなところにありますか? Coco:仕事の依頼は、私の活動をSNSで知ったり、知り合いのツテからくることが多いのですが、どの案件もそれぞれ違った苦労はあります。 例えば、赤れんがのお化け屋敷ですと、ストーリーの中身から設営に至るまで、本来の赤れんがのイメージを損なってしまうものは避けなくてはいけません。先方の担当者に、何がNGで、何がOKかをヒアリングして、それをふまえて提案していきます。また、京都オカルト商会のメンバーは3人ですが、他のスタッフとの内部の意見調整もあります。 あとは、お化け屋敷に来られるお客様が、いかに怖がってもらうかの仕掛けの工夫も大変です。私の手掛けるお化け屋敷は、没入感を大切にしています。そのため、世界観の作りこみはしっかり行い、お客様には入場前に、ストーリーがわかるイントロビデオを5分ぐらい見ていただきます。そうすると、没入しやすくなって、より恐さを楽しめます。 昔のお化け屋敷は、機械仕掛けの部分が多かったのです。ですが最近のは、アクターと呼ばれる人がお化けを演じるものが増えています。私も、アクターが重要な要素だと思っています。機械だと、相手を驚かせるタイミングを外すことがあったりするので、大変ではありますが、プロのアフターさんを起用するようにしています。
年中無休でホラーに浸るため事故物件に住む
――お化け屋敷は夏だけの季節限定というイメージですが、その職業だけで生活していけるかんじですか? Coco:はい。収入的には、おおむねお化け屋敷の企画制作でまかなえています。ただ、どうしても閑散期はあって、そのときは怪談や心霊スポットに関する本を書いたりしています。そうした仕事以外でも、24時間年中無休でホラーに浸っていたくて、事故物件に住み始めて、今4軒目です。 一人暮らしで、ペットの猫がいますが、ほかにお化け屋敷で使ったお化けが7体ぐらいいて、玄関開けたらそこにお化けがいます。でも、事故物件でも、なかなか本物のお化けにはめぐりあえないですね……。 2軒前の事故物件での話をしましょう。ある日、流し台に水をためた鍋を置いていました。見ると、なぜか水が揺れているのです。事故物件だから、「もしかして霊現象?」と思いがちになりますが、冷静に考えました。それで気づいたのですが、流し台の裏に洗濯機があって、そのとき脱水で回っていたのです。その振動が、鍋の水に伝わっていたのだと分かりました。先入観にとらわれるあやうさを実感しました。 今の物件では、24時間定点のペットカメラを、玄関とリビングに設置しています。外にいても、カメラのセンサーが何か動いたものをとらえると、自動で録画して送信してくれるのですね。それでも今のところは心霊現象と呼ぶような事件は起きていないです。