上田誠仁コラム雲外蒼天/第46回「教えて然るのちに困しむを知る~全日本の選考会シーズンを迎えて~」
山梨学大の上田誠仁顧問による特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! ********************** 早朝練習の帰り道。 昨年8位の立教大が初の伊勢路へ! 「レースで力を出せるように準備してきました」/全日本大学駅伝関東選考会 垣根の向こう側で紫陽花が、淡い色合いで雨に濡れつつ咲いている。 そのような姿に心癒されることもないほど、梅雨入りが例年より遅い6月であった。 多くの地区で、全日本大学駅伝の出場校選考会が行われるのもこの時期だ。 今年の関東地区の選考会は相模原ギオンスタジアムで例年通りの開催となった。 高温多湿の気象条件は覚悟の上とはいえ、確実に選手たちの体力を奪い、疲労を蓄積させてゆくグラウンドコンディションである。 選手は体調を整え暑熱対策を施し、スタートラインに立つ。出場権をかけたレースであるが故に、後半の組になれば暑さを凌駕するハイスピードの展開が繰り広げられることもしばしばである。 関東では10000m上位8名の平均タイムで選考され、選考会に出場する大学は20校。10000のレースを4組行い、各組2名ずつが戦略を持ってエントリーされている。レース4組8人の合計タイム上位7校が、11月の全日本大学駅伝へと駒を進めることができる。 オーソドックスに各組の役割をとらえてみる。 1組は駅伝と同じく、その後の2組目以降でストレスがかからないように流れを作ることが使命となる。レースは安定したペースで進み、後半につれてペースが徐々に上がり始める。ラスト5周前後はかなりのハイペースで進むことが予測される。少なくとも終了時点で、総合10位以内につけておきたい。 2組はペース変化に柔軟に対応できる選手が望ましい。2組も1組同様に、前半から無謀なペースで集団を引く選手はほぼ出ない。しかしながら、後半のペースアップは1組よりも激しいものとなる。 前半戦の1、2組でチームのボトムアップや、総合力の高さを窺い知ることができる。 3組はいよいよチームの主力級の登用となる。本戦を見据えて、主要区間を任される選手であることは疑う余地はない。それだけに流れに身を任せるように走っていた1、2組とは違い、ペースメイクを買って出るように先頭に立ってハイペースに持ち込む選手が現れる。 スピードレースとなっても集団が大きく崩れることはなく、中盤まで形成される。後半はさすがに走力の差がジリジリと現れ、ここでの差が最終順位を決定づけることもしばしばである。 最終4組はチームの大黒柱である2枚看板の登場である。ケニア人留学生が当然のごとくレースの流れを作る。しかしながら、近年は日本人エースとの差がそれほど開かない傾向にある。 秋から冬にかけての絶好の気象条件で出された自己記録は、高温多湿のこの時期ではあくまで参考程度の数字である。しかしながら、最終組を任された選手は、速さと強さを兼ね揃えた強者たちの集まりだけに、粘り強い耐久レースが展開される。 3組4組の中盤で苦悶の表情を浮かべる状況だと、第4コーナーのコーチングエリアに立って指示を出す監督の表情も厳しいものとなる。 レースが終了し、最終結果確定の発表をメインスタンド正面に設置されたマイクで、関東学連の次呂久幹事長が1位から順に読み上げた。同時に電光掲示板のスクリーン上に大学名が映し出される。