自家製爆弾vs竹やり。牧師が率いる「手作りの内戦」に同行した 国際社会の支援はゼロ。「打倒軍政」を支えるのは市民の熱意【ミャンマー報告】2回続きの(1)
ミャンマーで事実上の内戦が本格化している。2021年2月のクーデターでアウンサンスーチー氏の民主政府を倒した軍事政権に対し、国内各地の少数民族が昨年から一斉に攻勢を強め、支配地域を次々に拡大。軍政の統治は大きく揺らいだ。共同通信記者は3月、戦闘が続く北西部チン州で民主派の少数民族武装組織に同行し、軍事作戦と自治の現場を取材した。戦場では手製爆弾を使ったドローン空爆や、竹やりを備えた防御用落とし穴など装備の貧弱さに驚いた。国際社会に無視されて支援を得られず、市民の熱意を頼りに続く内戦の実態を2回に分けて報告する。(共同通信ミャンマー取材班) 【写真】ミャンマー首都に巨大大仏 軍事政権、巨費投じ国威発揚
▽装備で劣る民主派はドローン空爆で勝機をつかんだ 3月10日、チン州タインゲン。急峻な丘を歩いて登ると、荒れ果てた国軍陣地があった。縦横に掘られた塹壕には軍服や砲弾の破片が散らばり、かすかに死臭が漂う。1月12~16日、ここで少数民族部隊が国軍に総攻撃を仕掛け、約40人を殺害し部隊を全滅させた。2023年夏以降、計6回目の戦闘だった。 「敵は重機関銃とロケット砲で武装して陣地に立てこもり、近郊の基地から迫撃砲で援護を受けていた。こちらは自動小銃しか持たぬ兵士らが、じっと包囲した。気温は氷点下なのに防寒着もない。兵士らは凍えた体を少しでも温めようと銃を連射したがる。弾には限りがあるので『敵の姿を見るまでは撃つな』と命令した」 作戦を指揮したリアンカンマン司令官(35)は装備に劣る少数民族側が勝てた決め手は小型ドローン攻撃だと振り返る。「早朝から夕暮れまで6機を交代で飛ばし、5日間の戦闘中に計900発の手製爆弾を正確に敵陣に投下し続けた。敵はほぼ全員がドローン空爆で死亡した」
国軍との戦闘でドローンは主力兵器だ。司令官は「中国DJI社製を所有している」と明かした。部隊のドローン発進基地からは、全長2メートルに満たないプロペラ機が手製爆弾をつるして離陸していく。若い兵士がリモコンを操作し、精密な映像を見ながら爆弾投下のボタンを押す。数秒後に着弾して「ドーン」という爆発音が響く。ゲームのような感覚だ。 ▽「家族に危害が及ぶ」と言い、国軍兵士は投降を拒否した 国軍陣地には竹矢来(たけやらい)のような粗末な囲いが巡らされ、底に竹やりを備えた落とし穴が掘られていた。日本の戦国時代を思わせるような原始的な防御。塹壕には酒瓶やインスタントラーメンの袋が散らばり、たき火の跡があった。まともな食料もなく酒をあおりながら、ドローンの間断ない空爆を浴びて死んでいった国軍兵らの姿が目に浮かんだ。 リアンカンマン司令官は作戦開始前日、国軍の現地指揮官に携帯電話で連絡し投降を勧めた。だが相手は「私たちの家族は国軍基地で暮らしており軍政に監視されている。『死ぬまで戦え』という命令に背いて投降すれば家族に危害が及ぶ」と断り、戦闘に突入した。