数センチの矜持…日本ライト級王者の三代大訓が屈指の好カードを6回終了時TKOで制した理由とは…「2025年は勝負の年にしたい」
プロボクシングの日本ライト級タイトルマッチが7日、後楽園ホールで行われ、王者の三代大訓(30、横浜光)が同級3位で元日本フェザー級王者の丸田陽七太(27、森岡)の挑戦を6回終了時点のTKO勝利で退けてV2に成功した。丸田は3回に右目と右拳を負傷して棄権を申し出た。センチ単位の作戦を練り体格差を跳ね返した三代は、WBOアジアパシフィック&OPBF東洋太平洋同級王者である元同門の宇津木秀(30、ワタナベ)との3冠戦を熱望している。ビッグネームの世界王者が揃うライト級は国内も強豪がひしめく熱い階級。“ライト級ウォーズ”を勝ち抜くのは誰だ? 【画像】史上最強のSEXYクイーンら4人の“美ボディ”ラウンドガールが世界戦に登場!
屈指の好カードのあっけない幕切れに1250人が詰めかけた後楽園ホールが騒然となった。7ラウンドの開始を前に、突如、試合終了のゴングが打ち鳴らされたのだ。 「もう拳に力が入りません」 6ラウンド終了後に丸田が右の拳と、右目に異常を森岡会長に訴え、陣営がレフェリーに「棄権」を申し出た。 「ここからだったんです」 赤コーナーの三代は丸田の棄権を残念がった。 「目は気にしているなとは思っていたが、棄権するほどだとは思っていなかった。序盤のポイントを取って出てくるしかない状況にした。相手が出てきたらGOと思っていた。近い距離の攻防で、ここから体の強さ、回転力、ミートを出せるところだったんです」 5ラウンドの終了時点で公開された採点は3者共に49-46で三代を支持。丸田を前に出てくる状況に追い込んで“インファイト地獄”に落とすつもりだったが、その前に予期せぬフィナーレが待っていた。 数センチ単位のプロの矜持があった。 計算尽くされた、したたかな作戦が用意されていた。 身長は丸田が1m80で三代が1m77。明らかにリーチでも劣る三代が、スタートから不利なはずのジャブの差し合いを制した。 「リーチの長さとハンドスピードは丸田君がある。こっちは短いが、調整能力、パンチの出し所では勝っている。ジャブで差し負けるとは思っていなかった」 本来は、顔をやや前に出して「気持ちクラウチングに構える」が、この日は、左足を前に、上体を起こし、顎をあげて後ろ重心に変えて構えた。距離が数センチ遠くなった分、丸田は、もう一歩前へ踏み込んでジャブを伸ばさねばならなくなり、必然的に距離がつまり、三代のジャブが当たる間合いになった。 3ラウンドには、まさにその細やかな修正が、ズバリ的中し、突っ込んできた丸田の右目を左ジャブがカウンターとなって直撃。丸田は目をしばつかせた。実は、この一撃で丸田の視界を奪い、さらに、このラウンドで右の拳も痛めていた。 「入り際、離れ際。際、際を制するのがテーマだった」 横浜光ジムの石井一太郎会長が作戦を明かす。 1ラウンドを終えてコーナーに帰ってきた三代が、「よっしゃあ。いける」と手応えを口にし、4ラウンドには、丸田が左のアッパーの3連打、右のオーバーフックなどで逆襲に出て主導権を奪われかけたが「次のラウンドは絶対にポイントは渡しません」と石井会長に伝え、5ラウンドを制した。石井会長は勝利を確信したという。 「僕も今30歳。ボクシングキャリアもそんなにチンタラやってる場合じゃない。丸田君が強いというのは分かっていた」 三代は、あえて元日本フェザー級王者で、2階級をあげて減量苦から解放されてライト級の中でもトップクラスのポテンシャルを持つ丸田を挑戦者に指名した。丸田は、評判の潜在能力を随所に披露した。しかし、ほとんどの時間で受け身に回った。ジャブの差し合いを制した三代が、そうせざるをえない状況に追い込んでいたのである。 「丸田君のおかげで危機感を持ってここまで練習することができて、結果、成長することができた」 勝者の三代は丸田へのリスペクトを忘れなかった。
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