寺地拳四朗が夢見る「軽量級、もうひとりの怪物」とのビッグマッチ
今月13、14日の2日間、日本ボクシング史上初めて、世界戦7試合の2日間興行(『Prime Video Boxing 10』)が東京・有明アリーナで開催される。初日の13日、元WBC&WBAスーパー統一世界ライトフライ級王者で現WBCフライ級1位の寺地拳四朗は2階級制覇をかけて、同級2位のクリストファー・ロサレス(ニカラグア)と王座決定戦に挑む。現在国内では世界主要4団体すべて日本人が世界王者というバンタム級に注目が集まっているが、拳四朗の参戦で、ユーリ阿久井政悟(WBA)やアンソニー・オラスクアガ(WBO)が世界王者のフライ級も俄然目が離せなくなった。 【写真】トレーニングに励む寺地拳四朗 ライトフライ級では安定王者と呼ばれた男は、フライ級でも主役になれるのか。転向初戦でいきなり勝負をかける拳四朗に独占取材。連載最終回の今回は、拳四朗がボクシング人生の集大成に向けて実現を願う、井上尚弥に継ぐ軽量級の若き怪物、「バム」ことジェシー・ロドリゲスとの対戦について聞いた。(全4話/第4話) * * * 2024年9月21日(土)、東京・後楽園ホール。 同日、著者はフライ級転向初戦に挑む拳四朗のスパーリング相手をつとめた19歳、伊藤千飛の試合を見るため会場に足を運んだ。 アマチュア戦績21戦20勝1敗、高校二冠という実績を引っ提げ、長谷川穂積など数々の世界チャンピオンを育てた山下正人会長率いる真正ボクシングジム入りした伊藤は、今年4月のデビュー戦ではタイ人選手を強烈なボディ攻撃で沈めて1回55秒KO勝ち。この日はプロ2戦目ながらセミファイナル、バンタム級8回戦に抜擢された期待の大型新人だ。 スパーリングをした拳四朗も伊藤について、「すごく良いジャブを打つ。いまでも世界に挑戦できるレベルにある。とても楽しみな選手」と話すなど、実力を高く評価していた。 同日、会場で第1試合スーパーフェザー級4回戦のサブ、そして第4試合ライト級8回戦ではチーフとしてセコンドに付く加藤の姿を見かけた。加藤は、普段は拳四朗以外に11人の担当選手を抱え、名門三迫ジムのチーフトレーナーとして、チームのまとめ役も担っていた。メディアを通じて「世界チャンピオン、寺地拳四朗のトレーナー」という事で紹介されることは多いが、他にも大勢のボクサーと関わり支えているのだ。 加藤は出場選手のサポート、著者の自分も別途取材があり話す事は出来なかったが、戦況を冷静に分析して指示を出しつつ、情熱的に鼓舞して選手を支える様は、世界戦という大舞台で拳四朗のセコンドに付く際と何ら変わらなかった。 第1試合スーパーフェザー級4回戦に出場した二十歳の保谷勇次(ほうや・ゆうじ)は、加藤が三迫ジムのトレーナーに就任したのち立ち上げたキッズコースの一期生だ。キッズコース卒業後は、駿台学園ボクシング部に所属。3年間は部活で揉まれ、プロテストを受けるタイミングで三迫ジムに戻ってきた。 プロデビュー後は横井龍一トレーナーが担当についた。横井トレーナーは、名門ヨネクラジムで10年間指導し、同ジム閉鎖後、三迫ジムに移籍した。指導歴20年以上のベテランは明るい人柄で一般練習生にも慕われる、『チーム拳四朗』にとっても欠かせないムードメーカーだ。 ボクシングを通じて忍耐力や精神力を養い、礼儀作法やコミュニケーションスキルを身に付けると同時に、将来はプロとして活躍できる選手を育てたい。加藤はそんな思いを持って、キッズコースを2014年に立ち上げた。