ドミニカ共和国の意外な野球の育成環境。多くのメジャーリーガーを輩出する背景と理由
ドミニカから多くのメジャーリーガーが誕生している背景
これまでの説明を整理すると、ドミニカ共和国の仕組みは次のようになります。 ①スポーツである以上、試合では勝利を目指す。だが小学生や中学生、高校生など各世代での勝利が最優先されるわけではない。選手、指導者ともに「将来活躍できるか」という観点で評価される ②年代ごとに「今はどういったことに取り組むべきで、どのようなことはまだ必要ないか」という認識が全体に行き届いている。例えば、投内連携のように細かい連係プレーは中学生、高校生年代ではまだ必要なく、メジャーリーグに昇格する際に身についていれば問題がないことをどの年代の指導者も認識している ③試合はリーグ戦で行われるので、選手たちに思い切った投球や打撃、守備、走塁を促しやすい。負けたら終わりのトーナメント戦の場合、勝たなければ次がないのでバントや進塁打など“細かいプレー”を求められがちになる。ドミニカではリーグ戦で試合が行われるため、選手はミスを恐れるのではなく思い切ってチャレンジしやすい。指導者は目先の勝利より、選手の育成を最優先する こういった背景(育成の仕組みと指導方法)から、結果的にドミニカから多くのメジャーリーガーが誕生していると考えられます。 ただし、私が着目しているのは結果としてのメジャーリーガー輩出数ではありません。日本にはこれまで野球が発展してきた独自の背景がありますし、現在のシステムをすべて変えることが現実的ではないことも認識しています。 一方、全体のシステムをすぐに変えることができなかったとしても、当事者たちの創意工夫でできることがあります。指導現場に立つ各自がコーチとしてのあり方を見つめ直し、果たすべき役割を肝に銘じて活動することです。 その上で、選手の将来によりフォーカスした仕組みづくりを行っていく。これが日本球界を現在以上に成長させるために必要なことだと思います。 (本記事は東洋館出版社刊の書籍『育成思考 ―野球がもっと好きになる環境づくりと指導マインド―』から一部転載) <了>