ドミニカ共和国の意外な野球の育成環境。多くのメジャーリーガーを輩出する背景と理由
意外なドミニカの育成環境。「大切なのは、良い状態のまま…」
「それだけ?」という声が聞こえてきそうですが、それだけです。連係プレーやシートノックは行いません。MLB球団がこの年代の選手たちに求めるのは、そうした細かいプレーをできることではなく、捕球、肩の強さなど、守備の基盤になるものだからです。逆に言えば、細かいプレー(送りバントやヒットエンドラン、守備では中継プレーやバント処理、投内連携など)はプロになった後に身につけていけばいいということです。 だからプログラムの各チームでは、個人の能力を高めることに主眼を置いて練習、試合を行っていきます。球審から「プレーボール」の声がかかればもちろん勝利を目指しますが、選手の成長が第一で、勝敗は最優先事項ではないのです。 守備練習が終わったら、次は打撃練習です。日本では数箇所に打撃ケージを置いて取り組むのが主流ですが、ドミニカでは1箇所のみです。プログラムからアカデミーまで、すべてこのやり方です。マウンドの少し手前からコーチがテンポよく投げて、打者が順番に打っていきます。 こうした練習をドミニカでは「BP(バッティング・プラクティス)」と言います。日本でも使われ出した用語ですが、いわゆる「フリーバッティング」とは考え方が少し異なります。フリーバッティングはその名のとおり「自由に打つこと」になりますが、ドミニカでは低くて強いライナーをセンターから逆方向中心に打つ練習を繰り返します。 打撃練習で打つ本数にも、日本とドミニカでは違いがあります。日本のアマチュア野球では時間で区切って一度に多くの数を打つ場合が多い一方、ドミニカでは本数で区切り、多くても1回の打席で7本程度です。1日のBPで一人が打つ本数は通常30本程度。多い場合でも50本くらいまでです。 「疲れてくると悪い癖が出てきて、その打ち方を続けていると悪い癖が体に染み付いてしまい、将来的なパフォーマンスを落としてしまう。大切なのは、良い状態のまま打撃練習を終えることだ」 バウティスタはそう説明してくれました。選手たちは限られた時間や本数の中で集中して取り組み、打撃を改善させていく。コーチたちは選手の成長をじっくり見守りながら、長期的な視点で伸ばしていく。短期的な価値観にとらわれず、一度に多くのことをさせないのがポイントだと思います。 また、中学生年代のプログラムから将来を見据え、打撃練習や試合でも木製バットを使用して行うケースがほとんどです。