リアルな絵は「おせち」そのもの! 話題の絵本、発売前から重版に 料理に込められた「願い」伝える
「かわいらしいものよりも、本物を届けたい」
絵本『おせち』は、編集部が長年あたためていた企画でした。 月刊絵本「こどものとも年中向き」を担当する、こどものとも第一編集部編集長・関根里江さんは、「おせち料理は受け継がれてきた日本の食文化です。時代の変遷とともにバラエティに富んだ内容に変わっていますが、健康や成長を願う気持ちが込められている伝統的なおせち文化について、子どもたちに伝えたいと思いました」と話します。 「かわいらしいものよりも、本物を届けたい」という思いから、イラストやデザインにもこだわりました。 リアルなイラストは、料理研究家の満留邦子さんが絵本のために作ったおせち料理を写真に撮り、それをもとにイラストレーターの内田有美さんが描きました。 写真そのものではなくイラストにしたのは、「手で描かれたあたたかみやぬくもり感を伝えたかったから」です。 さらに、「おせち文化」と一口に言っても地域や時代によって多様なため、和文化研究家の三浦康子さんに監修を依頼。関東と関西で内容の違う祝い膳の酒の肴「祝い肴(ざかな)」などの注釈も入っています。 編集長の関根さんは、「一見、『これが子ども向け?』と思う方もいるかもしれません。しかし、和食の美しさは子どもにもちゃんと伝わると信じて、大人が本気で本作りをしました」と話します。
幅広い世代が関心を寄せる
家族で絵本を楽しむ読者も多く、次のようなメッセージも寄せられたといいます。 「小学2年生の長男はこのリズミカルに読める絵本がとても気に入ったようで、弟に歌うように読み聞かせをしていました。読み終えると二人で、『このエビも写真みたいだね』『いちのじゅう、黒豆好き~』など、絵を見ながら、おせちを味わっていました」 「お正月、親戚が集まる義父母宅で、毎年恒例のおせちを食べました。2歳になった娘にとっては、生まれて初めてのおせち!絵本で予習したおせちの一つ一つを見せながら、由来を話していきました。義父母も『こりゃあ、私たちにとっても良い絵本だ!勉強になる!』と、一緒に読み聞かせをしてくれました」 「『おせち』は私と子どものお気に入りの一冊です。描かれている色とりどりの食材は、見るとついつい食べたくなってしまいます。本を開くたびに、『おいしそうだね。どれ食べたい?』と、子どもと話しています。また、その食材に込められた意味は、私自身も知らなかったことが多く、とても勉強になりました」 『おせち』のハードカバー化は、福音館書店のX(旧Twitter)公式アカウントでの告知が17万以上表示され、「あの伝説の『おせち』がついにハードカバー化!?」「絶対刊行してくれると信じてた」「2025年に間に合うように販売してくれてありがとうございます!」と注目を集めました。 初版3万部を予定していましたが、予約受注が好評のため発売前に重版が決まったといいます。 編集長の関根さんは、「小さいお子さんから、おじいちゃんおばあちゃん世代まで幅広い方々が手にとって楽しんでくださったと、おたよりもたくさんいただきました」と話します。 「この絵本がみなさまの健康と幸せをもたらすお守りのようになってくれたらと願っています。年の初め、おせちを食べながら、この絵本も味わっていただけたらうれしいです」