「TVer大躍進」となった2024年 その背景をひもとく
今年、TVerの伸びがすごいという話があちこちで聞かれるようになった。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が出した 「メディア定点調査2024」によれば、TVerの利用率は緩い右肩上がりで推移してきたが、前年の2023年には39.5%であったものが、24年は50%越えを達成し、もはやキャズムは超えたといえる。 【詳細はこちら】TVerがこれほど人気となった理由をじっくり見る(全10枚) また同研究所の「テレビ番組視聴意識調査」において、TVerの認知率は全年代を通じて9割を超え、利用頻度も男性10~20代では3割がほぼ毎日利用すると答えており、1つのメディアとして定着していることが分かる。 TVer自身も、12月11日に24年の利用動向をまとめた「数字で見るTVer」を公開した。「数字で見るTVer」は24年9月に公開が始まった広報データだが、この12月に出たものが最新という事になる。 今回はこのデータをにらみながら、TVerの利用形態や、その立ち位置などを分析してみたい。
TVer躍進となった要因
TVerは、テレビ番組の見逃し配信サービスという立ち位置だが、今年大躍進した理由の1つは、ライブ配信の充実だろう。スポーツライブでネット配信サービスが足場を固めた例としては、2022年の「FIFAワールドカップ カタール 2022」において、ABEMAが全試合無料中継したことが記憶に新しい。 TVerもその例に漏れず、24年のパリオリンピックのほぼ全競技を単独無料配信した。コンテンツの総再生数は1億1000万再生を突破、全ユーザーの総再生時間は2300万時間に上ったという。まさに日本中の目玉を奪った快挙であったわけだ。 スポーツイベントに強い理由は、同時刻に複数行われる試合を、チャンネルの制限なく同時配信できることである。これは放送枠が決められているテレビ放送にはなかなかできないところだ。もっとも地上波放送は12セグメントに分けられており、1つの放送波で3つの番組を同時放送することもできる。ただこうした機能を積極的に利用しているのはNHKぐらいで、民放では機能はあるがなかなかやれていないというのが実情である。 また地味に見逃せないのが、24年1月1日に発生した能登半島地震ニュース速報の視聴の高さである。10月には日本シリーズと重なってはいるが、衆議員総選挙特番もかなり視聴されているのが分かる。 もちろんこうした報道は地上波テレビ放送でも行うが、ずーっとやり続けるわけにはいかない。一方ネットライブでは、いわゆる専門チャンネルとして長時間の配信に耐えられる。見逃し配信、いわゆるAVODとしてだけでなく、専門ライブチャンネルとしての有用性も示された結果といえる。 一方で番組検索数では、10番組中9番組がバラエティとなっている。こう見るとTVerはバラエティ番組が中心なのかと思われがちだが、実際には違う。検索結果のランキングということを逆説的に考えれば、これらの番組は「お気に入り」に登録して毎回見るわけではないということを表している。 現在ネットニュースでは、テレビの後追い記事、芸人がこの番組でこんな事を言ったとかいう記事が多く出ている。またXなどのSNSでも、バラエティ番組の情報は一言で切り出しやすいことから、投稿に向いている。 こうした情報拡散の結果、後追いで視聴するために番組が検索されたものと考えられる。このような利用形態は、ある意味番組見逃しサービスとしての本来の姿であり、バラエティ番組とネットとの親和性の高さをうかがわせる。