「TVer大躍進」となった2024年 その背景をひもとく
主力の導線
TVerの主力は、ドラマである。配信番組数が多いのももちろんだが、現在「名作ドラマ特集300作品」といった企画で、1990年代の旧作ドラマも復活している。「ロングバケーション」「踊る大捜査線」といった一世を風靡したドラマのお気に入り登録数もそれぞれ30万、28.7万と、好調だ。 TVer利用の導線を見てみると、ホームからの遷移でもっとも多いのが「マイページ」である。マイページには「お気に入り」に登録した番組へ直接飛ぶことができる。旬な番組ならホームに直接載るわけだが、そうではない見方をしている人が主力という事である。 またお気に入り登録数で見ると、50~64歳女性が最多、次いで35~49歳女性と続く。テレビ的に言えば、「F3層」「F2層」を抑えているという事になる。 テレビマーケティング的にもっとも重視されるのは、20~34歳女性の「F1層」だ。ここがもっとも消費意欲が強く、コスメやスキルアップなどにお金をかける。また独身者が多いことから、それなりに自由に使えるお金があるため、CMを打つ企業としては最重要ターゲット層となっている。 一方でTverが強いF2・F3層は、それに続く消費層である。従来は健康志向の強い層として認識されていたが、昨今はこの層にも独身者が多い事があきらかになり、いわゆるお一人様需要として新しいターゲットとなっている。つまり旧来の狙いはテレビ放送に任せ、TVerでは新ターゲット層を獲りに行くという戦略が伺い知れる。 別の意味で気になるデータは、倍速再生の利用率だ。全世代平均と比べて倍速再生の利用率が高いのは、女性の15~19歳を先頭に、49歳までのF2層までが順序よく並んでいる。 倍速再生の利点としては、タイパことタイムパフォーマンスが上げられるが、同年代の男性がそれほど利用していないことから、世代層全般の話ではないのかなという気がする。筆者にはまさに15~19歳層の娘と息子がいるが、タイパに対する考え方や認識にそれほどの違いは見られないように思う。 だとすればそこには特有の行動様式があるはずで、思い当たるとすれば「推し活」であろう。例えば音楽番組に好きなアーティストが出ていたら、他の部分は飛ばして推しだけを等速再生する。またアニメに関しても、推しキャラ登場シーン以外の部分は倍速再生するが、推しキャラのシーンは3~4回「こする」といった再生パターンが見られる。 この傾向は、以前TVS REGZA クラウド事業センター センター長の片岡秀夫さんと対談した際にも、同様のデータを見せていただいた事がある。タイパ重視ゆえに全編を倍速再生すると考えるのは誤りで、冗長なところは飛ばし、重要なところは何度も見るという時間を捻出するための、倍速再生なのだ。ある意味「見流している」のではなく、われわれが想像する以上にちゃんと全体構成を見て、時間を傾斜配分しているのである。