LGBTQ+当事者の子ども時代の体験談を児童文庫で小説化。著者が「子どもたちにこそ伝えたい」と語る“性のあり方”とは?
「特別ではなく、自分たちと変わらないと思った」読者のフラットな感想に驚き
この作品に関して、小中学生の読者から多数の感想が寄せられているという。以下に一部を紹介する。 「LGBTQ+について、物語を読んでよくわかりました。登場人物の心情や考えが細かく書かれていて、感情移入しやすかったです。LGBTQ+についての悩みを持っている人がいたら、私も力になりたいと思いました」(12歳) 「LGBTQ+や多様性、今はたくさんの人の思いや経験が本にされていて、このように子どもでも手にとりやすい内容の文庫が増えてきて、とてもうれしいなと思います。小説の形になっていることで、小中学生には当事者の方々の気持ちがよりストレートに届く作品だなと感じました。いつかLGBTQ+という言葉もなくなって、みんながみんなと理解しあえる世の中になるといいなと思いました。みんなが『私は私です!』って言える世の中サイコーですね!」(中学2年) 「私自身、小学生の後半ごろに『自分って女の子なのかな』ってずっと悩んでいたことがあって、実話を元にされているっていうのも相まってすごく共感できる点がたくさんありました。 今の私は『自分は男でも女でもない、グレーゾーンにいるクエスチョニングだ』と胸を張って言えるけど、仮に小学生のころの私に言えるかと聞いても、絶対に自分がクエスチョニングだということは胸の奥底に極限まで押し込めて、『私は女の子だよ』って、嘘を塗りたくりながら言ったと思います。 そういう過去もあって、この主人公たちの心情が共感できたんだと思います。読んでいて『ああ、自分もこんなん思ってたな。あの時は苦しかったなぁ、、』と1人泣きながらしみじみしてました(笑)。周りからの偏見は薄れてきてはいるけれど、まだ全部なくなったかって聞かれるとそうじゃないので、もっといろんな人が住みやすい、生きやすい環境にしたいなって改めて思いました」(中学3年) 「LGBTQであってもそうでなくても、『自分らしく生きる』ということはとても大事なことだと思いました。LGBTQの人たちが気持ちよく楽しく暮らすには周りの理解がいちばん必要なんだと思います」(中学2年) ――たくさんの感想が読者から寄せられていますね。 泣きながら感想を読みました。理解できない、受け入れ難いという子はいなくて、スッと呑み込んでくれる子が多かったので、本当にうれしく、書いてよかったと思いました。 また、「当事者です」と書いてきてくれた子も何人かいて、それ以外にも「友だちにもいる」といったことが感想にサラッと書かれていて、この年代の子たちは、想定していたよりもはるかにフラットな考え方を持っていると感じました。 執筆をしているときは、「教えてあげよう」というような感覚で書いていた部分もありましたが、私が思っていた以上に読者はLGBTQ+について知っていて、特別なものだとは思っていませんでした。 読み手はこんなにフラットに考えられるようになっているのに、こちらが勝手に、こういうことを書くと混乱してしまうのではないか、まだ早いのではないかなどと考えすぎていたと感じました。 ――印象に残っている感想はありますか? 「LGBTQ+についてはあまり知らなかったが、思っていたよりもそうではない人と変わらないと思った。特別で自分たちと違うというイメージを持つと、当事者は悩んだり隠したりしてしまうので、特別ではなく、みんなと同じように普通に過ごせるようにすることが大切だと思う」という感想をいただきました。本当に素晴らしいですし、その通りだと思います。 今回、取材する方を検討する際にも、モデルさんやインフルエンサーさんにお願いすることも考えましたが、そうではなく一般の方に取材をすることを決めました。普通に暮らしている、すぐ隣にいる、駅ですれちがっているかもしれない人だと思ってもらえることが理想だと思ったからです。ですので、こういった感想は本当にうれしいです。