オーナー社長への“花のプレゼント”を強要される23歳女性社員。「あなたはかわいい」にア然
いかに公平な社会をつくるべきか
そこで社外取締役に女性と登用するケースが増えてきました。何とか、比率を上げたいのかもしれません。キャリアや実績がすばらしい方がいる一方で、なぜ、こういう人が社外取締役なのかな、と疑問に思う人もいます。社内に今すぐに役員にできる女性が少ないと経営層は判断しているのかもしれませんね。それであるならば、残念に思います。 「女性管理職比率」を数年で上げていこうとすると、昇格が遅れたり、不本意な扱いを受けたりする男性が増えるかもしれません。今後、きっと増えてくると思います。その不満もわからないでもないのですが、世界で認められる公平な社会をつくるためにどうするかと真剣に考えていただきたい。男性だから、女性だからという考えは早くなくしていきたいです。 アメリカでは女性に限らず、有色人種、中高年、障がい者などを何らかの形で守る法律がたくさんあるのです。一方で、40歳以下の白人男性を守る法律が少ないと指摘する人がいます。確かにその世代の白人男性はある意味でハンディといえるのかもしれませんが、生まれた時から優位な立場や環境にいる人は多いのです。 知人である40歳以下の白人男性たちはそれを認め、女性や有色人種、中高年、障がい者を含め、いかに公平な社会をつくるべきかを語ります。私は日本の男性もそうであってほしい、と願っています。グローバル化とは英語を話すことだけでなく、そのような人たちがたくさんいる社会や文化を知り、そこで生きていくことでもあるのです。
点数をシュレッダーに…問題視される採用の裏側
私が人事コンサルティングの現場や知人のコンサルタントから聞き、疑問に思うことを述べます。正社員数が50人程のベンチャー企業の新卒採用で、書類選考や適性検査、筆記試験、数回の面接の合計得点で内定者4人を決めました。内定を出す寸前では得点の高い順番では、1~3番までは女性で、4番目が男性だったようです。ところが、役員や人事部は「女性は辞めやすい」として男性3人、女性1人にしたのです。つまり、1番の女性を内定にし、ほかの2人の女性は不採用、4番の男性のほかに5、6番を内定にしたのです。 内定を出す寸前にジェンダーを、しかも偏見にもとづく理由でこんな操作をしていたことがおおやけになると、欧米の企業では問題視されるでしょう。採否のプロセスをつくり、それで試験をしていながら、その結果とは違うように操作をしているならば問題です。 日本を代表する大企業でも同じことが行われている場合がありえます。この企業では新卒の総合職を雇う際、書類選考や適性検査、筆記試験、数回の面接の合計得点で女性のほうが男性よりも高い傾向が毎年あるようです。ところが、女性の内定者はほぼ毎年3割前後に落ち込みます。そこには、何かの操作があるのではないかと私は見ています。 厳正な試験のプロセスをつくり、それにエントリーさせ、採点をしていながら、いざ内定を決める時には偏見や差別意識により操作をしているならば、欧米社会で認められるのは難しいように思います。女性の管理職、役員を増やしたいならば、新卒時で男女比をともに5割にすべきでしょう。今回の事例の女性からは、こういう古い感覚のままの日本企業の問題点を感じます。この学習塾には「今は2024年だよ! 花を渡している場合じゃない!」と言いたいですね。 <取材・文/吉田典史> 【奥山由実子(おくやまゆみこ)】 東京、浅草出身。最大手企業研修専門会社で、企画、営業、マネージメントを担当。1993年アメリカ、ニューヨークにて人事コンサルティング会社を設立。約2800にのぼる在米日本企業に対して人事・組織コンサルティングのプロジェクトを提言。制度改定、理念浸透を実施。2007年、2社目を設立し売却後、2017年、株式会社カルチャリアを設立。加速する日本のグローバル化と、その中で求められる働き方改革に使命を感じ、画期的なワークスタイル改革を軸にした新事業を展開している。 X(旧ツイッター):@yumiokuyama 【吉田典史】 ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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