一時は「どん底の危険」水域まで悪化した米中関係、トランプ氏返り咲きならどうなる? ハリス氏の外交手腕は未知数、各国が注目する大統領選の行方
バイデン米大統領は、米国と中国の関係を「民主主義と専制主義の闘い」と宣言した。中国を「国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競争相手」と位置付け、同盟・友好国との協力を強化した。 【写真】米中安定の安定は「この星に必要」 習主席、友人への手紙で
トランプ前大統領が多国間の協力を軽視し制裁関税を連発したのに対し、バイデン政権では安全保障や価値観を軸とした対立へと変わった。11月の大統領選でトランプ氏が返り咲けば、米中対立の構造は再び変化する可能性がある。一方、民主党の大統領候補に指名されたハリス氏の外交手腕は未知数だ。 大国のせめぎ合いは世界を巻き込む。その行方を左右する大統領選の展開を各国が注視している。(共同通信ワシントン支局 木梨孝亮) ▽外交儀礼を無視し非難合戦 バイデン政権の米中関係は大波乱の幕開けだった。 「中国の行動は世界の安定を維持する秩序を脅かしている」 「米国が上から目線で中国を語る資格は20年前、30年前からない」 2021年3月、米アラスカ州アンカレジでブリンケン国務長官と中国外交担当トップの楊潔篪共産党政治局員(当時)が初めて顔を合わせた。2人は外交儀礼を無視し、報道陣を前にして1時間以上の非難合戦を繰り広げた。
さらに緊張が高まったのは2022年8月。民主党のペロシ氏が現職の下院議長として25年ぶりに台湾を訪問し、蔡英文総統(当時)と会談した。台湾を自国の一部とする中国は激怒し、台湾を取り囲む形で大規模軍事演習を実施した。弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内にも落下。中国は一方的に軍事対話の停止も表明した。 ▽中国による偵察発覚で冷え切った関係 バイデン氏は2022年11月、インドネシアで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせ、中国の習近平国家主席と会談した。 「われわれが望んでいるのは衝突ではなく競争だ」。こう伝え、緊張を緩和するため意思疎通を強化することを申し合わせた。国務長官のブリンケン氏が中国を訪問することでも合意した。 だが2023年に入り、中国の偵察気球が米国の本土上空を飛行していることが発覚し、情勢は急変した。バイデン政権は2月上旬に予定していたブリンケン氏の訪中を直前で延期。意図を探ろうとオースティン国防長官が中国側との電話会談を申し入れたが、断られた。関係は冷却化し、米側の目算は狂った。