一時は「どん底の危険」水域まで悪化した米中関係、トランプ氏返り咲きならどうなる? ハリス氏の外交手腕は未知数、各国が注目する大統領選の行方
ブリンケン氏は北京で習氏や王毅外相と会談するのに先立ち、最大の経済都市、上海を訪問。観光名所の外灘(バンド)を散策したり、中国のプロバスケットボールの試合を観戦したりした。 米側はこうした様子を交流サイト(SNS)で投稿し、友好ムードを演出することにこだわった。宿泊先はバンド沿いにあるゴシック建築の建物で、上海のランドマークとして知られる「和平飯店」だった。 ▽「冷遇」「警告」、根強い不信感 一方、中国のSNSでは、ブリンケン氏の上海の空港到着時にレッドカーペットがなかったことが「冷遇」だと話題になった。タイミングを計ったかのように、中国海軍がブリンケン氏の宿泊先に近い黄浦江の岸にミサイル駆逐艦を停泊させていたことで、米国への「警告」のメッセージだと受け取る見方も出た。 外相会談では、ブリンケン氏が「上海は良い旅でした」と語ったのに対し、王氏が「中米関係はマイナスの要因も積み上がっている」とくぎを刺す場面もあり、根強い米中間の相互不信を感じさせた。
▽複層的な対中国包囲網 バイデン政権はインド太平洋地域で、複数国が多層的に折り重なるように連携する「格子状」(米高官)の対中包囲網の構築に力を入れてきた。「中国にはない同盟国の存在が、米国が持つ最大の優位性だ」との考えからだ。 米国、イギリス、オーストラリアの3国による安全保障枠組みAUKUS(オーカス)を創設。オーストラリアに原子力潜水艦を導入した。 米国、日本、オーストリア、インドとの協力枠組み「クアッド」は首脳レベルに引き上げた。南シナ海で中国と対立を深めるフィリピンを加えた米国、日本との3カ国連携の強化も図った。 いずれの枠組みでも、経済面では半導体や人工知能(AI)といった先端技術での協力を重視し、中国からの依存脱却を狙った。 ▽人権外交を掲げる米国の「二重基準」 だが、パレスチナ自治区ガザ情勢を巡り、中国に付け入る隙を与えた。バイデン氏は「人権外交」を掲げる一方、民間人被害をいとわないかのように激しい攻撃を続けるイスラエルを支持する。矛盾を抱えたその姿勢は、国際社会で影響力を強める「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国にとっては「ダブルスタンダード(二重基準)」に映った。