一時は「どん底の危険」水域まで悪化した米中関係、トランプ氏返り咲きならどうなる? ハリス氏の外交手腕は未知数、各国が注目する大統領選の行方
互いに何を考えているのか読めず、疑心暗鬼が深まって意図しない衝突に発展する―。ある米政府高官は最悪のシナリオが頭をよぎったといい、「米中関係はどん底で、本当に危険だった」と当時を振り返る。 ▽「古い友人」として握手 バイデン政権は一定期間を置いた後、再び関係改善の糸口を探り始めた。延期していたブリンケン氏の訪中を2023年6月に実現させ、続いてイエレン財務長官やレモンド商務長官らも中国を訪れ、首脳会談の実現に向けて機運の醸成を図った。 習国家主席は11月、サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため約6年半ぶりに米国を訪問した。バイデン氏はサンフランシスコ近郊にある広大な邸宅で習氏を迎え、約4時間にわたり意見を交わした。 バイデン氏と習氏はもともと「老朋友(古い友人)」だ。2011年8月、オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は中国を訪れ、国家副主席から国家主席への昇格が確実視されていた習氏と多くの時間を過ごした。バイデン氏は「外国の指導者の中で誰よりも習氏のことを知っている」と自負する。
「お帰りなさい。私たちは長い付き合いだ」。会談でバイデン氏は習氏にこう語りかけた。台湾や南シナ海などを巡る問題では双方の立場は平行線をたどったが、軍の高官同士の対話を再開することで合意した。 2人は背に腹は代えられない事情を抱えていた。米国はロシアによるウクライナ侵攻に加え、2023年10月に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘への対応で精いっぱいだった。 中国にとっては成長が鈍化した経済の立て直しが喫緊の課題だった。余力を失ったバイデン氏と習氏が交わした握手は「休戦」のための妥協の産物だった。 ▽国務長官が上海訪問で友好演出 米国と中国は合意に基づき、国防対話を順次再開した。2024年5月にはシンガポールで両国の国防相が1年半ぶりに対面で会談し、偶発的な衝突を避けるための対話の重要性で一致した。米側は関係の安定化に躍起で、こうした姿勢は4月のブリンケン国務長官の訪中時にも如実に表れていた。