急遽F1デビューが決まったフランコ・コラピント……特例に次ぐ特例でスーパーライセンスを手に
ローガン・サージェントの後任として、ウイリアムズからF1デビューすることになったフランコ・コラピント。彼は今季FIA F2参戦1年目、昨年はFIA F3でランキング4位だった……にもかかわらず、F1参戦に必要なスーパーライセンス発給条件を満たしているのはなぜなのか? 【ランキング】2024年F1ドライバーズランキング スーパーライセンスを取得するためには、各レースシリーズに割り当てられたスーパーライセンスポイントを直近3年で合計40ポイント獲得しなければならないと、FIAのレギュレーションによって定められている。 サージェントの後任としてウイリアムズに大抜擢されたコラピントは、直近3年のパフォーマンスを見返しても、F1参戦に十分なモノを発揮したとは言えそうもない。しかし、複雑な条件ながらも、スーパーライセンスの発給要件を満たしているのだ。 アルゼンチン出身のコラピントは、ウイリアムズ・ドライバー・アカデミー所属。今年のイギリスGPではウイリアムズからF1公式セッションデビューを果たした。メインで参戦中のFIA F2では、イモラ戦のスプリントレースで優勝するなど合計3回の表彰台を獲得し、ランキング6番手につけている。 ただこのF2の成績はスーパーライセンス発給条件には当てはまらず、昨年までの3年間(2021年~2023年)の成績が、スーパーライセンスポイントの対象となる。その3年を見返してみると、以下のような成績になっている。 2023年:FIA F3ランキング4位/15ポイント 2022年:FIA F3ランキング9位/3ポイント 2021年:アジアン・ル・マン・シリーズ3位/4.5ポイント、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ/5ポイント この成績を総合すると、コラピントは直近3年で27.5ポイントしかスーパーライセンスポイントを獲得していないこととなり、スーパーライセンスの発給条件を満たさない。 しかしなぜコラピントはF1に出場できるのか? それは、FIAが新型コロナウイルスのパンデミック期間に対する救済措置として設けた特例をうまく使ったということだ。 パンデミックの影響を受けた2021年が直近3年の一部にかかる場合、特例として過去4年のうち特に成績の良い3年をスーパーライセンスポイント獲得対象とすることができる。つまりコラピントの場合は、2020年も対象とすることができるのだ。 コラピントはこの2020年に、フォーミュラ・ルノー・ユーロカップとトヨタ・レーシング・シリーズに参戦し、いずれもランキング3位となった。本来ならば1年のうちにスーパーライセンスポイントの対象となるのはひとつのシリーズだけだが、複数のシリーズに参戦した場合でも、そのシリーズの実施期間に重複がなければ、両方のシリーズをスーパーライセンスポイントの獲得対象とすることができる。 これによりコラピントは、2020年に17ポイントを獲得したことになる。これに2022年の9.5ポイント、2023年の15ポイントを加算すると、合計41.5ポイントとなり、ギリギリながらF1参戦に必要な条件を満たすということになるわけだ。 特例に次ぐ特例で、F1参戦という大チャンスを手にすることになったコラピント。ジュニアカテゴリーでのチャンピオン経験は2019年のスペインF4のみであり、その起用に疑問符がつくのは確かだ。 しかしF1で優れたパフォーマンスを発揮すれば、その雑音もいつしか消えるはず……あとは彼の腕にかかっている。
Bjorn Smit