「わかったつもり」の勘違いが落とし穴につながる 過去の事例に学ぶ思い通りに仕事を進める方法
もちろんソフトバンクでは、震災直後から、通信サービスや店舗などの復旧、募金窓口の設置、携帯電話の貸し出しなどへの対応を行っていました。しかし、必要な復興支援は、発災直後の短期的なものだけではありません。 被害が大きければ大きいほど、数カ月、あるいは数年、10年以上にもわたった支援は不可欠です。街は数年できれいになるかもしれませんが、人への継続的な支援が必要なはずです。 阪神・淡路大震災での復興支援を見る限りでは、発災後3カ月もすると、支援金が激減してしまっていました。そうした事態を防ぎたい、一時的ではなく継続的に支援できる方法はないかと模索する中で生まれたのが、このプランでした。
私はかつてマーケティング部署にいたときの、新料金プラン作成の経験を生かし、同様に数字の試算やオペレーションの設計を行い経営会議にかけました。 プランの概要は創業者である孫正義さん(以下、孫さん)や経営陣全員からすぐに好反応を得られたのですが、最初の経営会議では、「決裁不可。やり直し」。なぜダメなのか、どこに問題があるのかと尋ねても、「もう一度よく考えて提案し直すこと」と、とりつく島もありませんでした。
■「わかったつもり」が見落としにつながる 結果として寄付先を提案し直して、「チャリティホワイト」は赤い羽根の「中央共同募金会」と「あしなが育英会」を寄付先とし、2011年8月のサービス開始から、のべ300万人を超える申し込みを獲得。 合計寄付額は11億1770万296円となりました(2020年7月31日をもって、新規受付を終了)。しかし、この最初の提案が通らなかったのは、私が、孫さんはじめ経営陣を「わかったつもり」になっていたからに他なりません。
最初の提案の際、私はとにかく、「被災地の子どもたちに、長期・継続的に支援する」ということだけを考え、それができそうな団体をいくつかピックアップしていました。中には、発足して間もないところもありました。 しかし、経営陣が重視していた点は、それだけではありませんでした。長期的・継続的な支援はもちろんの前提として、さらに「できるだけ迅速に」「より多くの成果を上げる」ことも重視していたのです。 ■相手が大事にしていることを見極める