「観光客は自宅に帰れ」 地元住民がプラカードで抗議デモ! スペインの現実は「京都」にも迫るのか? 行き過ぎた“観光公害”を考える
“インバウンド至上主義”の終息
オーバーツーリズムが進行するなかで、宿泊施設の増加が問題視され、各地で危機感が高まっている。 日本では、2018年に施行された住宅宿泊事業法により、民泊営業が年間180日までに制限され、さらに各自治体が独自の規制を導入することで、賃貸物件が民泊に転用されて家賃が高騰する問題を抑制できている。しかし、多くの国々では、オーバーツーリズムが混雑を引き起こすだけでなく、住む場所さえ奪う深刻な状況を生み出している。 このような状況のなかで、バルセロナ市の民泊規制は、グローバル観光時代における都市のあり方を問う重要な問題となっている。住宅を投資商品ではなく 「生活インフラ」 として再定義する動きは、観光都市が直面する構造的な課題に対するひとつの答えといえる。しかし、その成否は単なる規制だけでなく、包括的な都市政策の展開にかかっている。 ・観光による経済的利益 ・市民の居住権 の両立は、多くの都市が今後直面する課題であろう。 日本でも、京都の町家を宿泊施設に転用する動きや、東京のホテル代の高騰が問題となっている。観光業が見た目以上に大きな産業となり、低賃金や不安定な雇用を生み出していることは明らかだ。 このような現状を踏まえ、他国の例を参考にして大胆な政策転換を行うべき時期が来ているのではないだろうか。今求められているのは“インバウンド至上主義”からの脱却と、 「この土地は誰のためのものか」 を再考することだ。
キャリコット美由紀(観光経済ライター)