監督同士が大喧嘩!? 秋ドラマ最注目『宙わたる教室』実験シーンの裏にあった、想像を超える苦労
【『宙わたる教室』制作陣インタビュー 第3回】 伊与原新の同名小説を原作に据え、窪田正孝が主演を務めるドラマ10『宙わたる教室』(NHK総合、火曜22時ほか)。脚本、キャスト、演出と三拍子揃った秀作だが、実験再現の最大の「功労者」とも呼べるのが、第6話の監督兼チーフ助監督の山下和徳氏だ。 【写真】「このドラマ、終わったな…」監督たちを追い詰めた実験とは? 実は、本作の最大の危機も「実験」にあった。 『宙わたる教室』制作陣へのインタビュー第3回となる本記事では、山下監督をはじめ、チーフ監督の吉川久岳氏、制作統括の橋立聖史氏と神林伸太郎氏に、実験シーンの苦労話を伺った。
なかなかうまくいかない実験も…
本作で実験が登場するのは、第1話の「プリズム実験」「教室に“青空”を作る実験」、第2話の「味噌汁で積乱雲を作る実験」「酢を使った噴火実験」、第3話の「火星の夕焼け実験」、第4話の「クレーター形成実験」、第5話の「クレーターの内部構造を可視化する実験」、第6話の「重力可変装置を使った実験」だ。 これらは科学実験考証を担当した米村でんじろう氏のスタッフ2名とキッチン地球科学(身近な道具や食材を使って地球科学の現象を理解する研究)の研究者でもある熊谷一郎氏、山下氏と演出担当1名とで行われた。 そもそも原作者の伊与原新氏は小説家ながら、東京大学大学院理学系研究地球惑星科学専攻博士課程を修了。その伊与原氏の原作があり、強力な考証がついているという万全な体制だが……。 「窪田正孝さんが演じる主人公・藤竹先生が何度も言うように『自動的にはわからない』、まさにトライアンドエラーの繰り返しでした。プリズム実験などすでによく知られているものはスムーズにいきましたが、以降の実験に関しては原作の伊与原先生は『実験というのは論文を読んで手順を踏んでいても、ちょっとしたコツを知らないとうまくいかないことが多いものです。たとえ結果が分かっているものだったとしても、自分で手を動かして試行錯誤することが大事で、そこでうまくいくとやっぱり実験って面白いんですよ』とおっしゃるのですが……そこにリアリティを保ちつつ、どう物語に落とし込んでいくかに苦労しました」(山下氏)