監督同士が大喧嘩!? 秋ドラマ最注目『宙わたる教室』実験シーンの裏にあった、想像を超える苦労
監督同士が大喧嘩!? ドラマ最大の危機だった「味噌汁で積乱雲を作る実験」
さて、このドラマ最大の危機が訪れたのは、実は第2話の「味噌汁で積乱雲を作る実験」だった。味噌汁を入れたビーカーをホットプレートで熱し、味噌汁が温まる様子を真横から見ると、徐々に上澄みと下にたまる味噌が分離し、さらに熱していくと味噌が下から湧き上がる。 「原作はそれを『味噌汁で積乱雲を作る』と表現していました。しかし実際に実験してみると、味噌が積乱雲のようにビーカーの中央から上がって広がっていく様子がなかなか再現できない。器の外側のほうの液体が先に熱されてくるので、端から味噌の成分が湧き上がってしまうんです。 それに付随して周りの味噌の成分も引っ張られて一緒に上がってしまうので、『一番最初に端から上がる味噌の成分の一瞬だけを狙って撮影できないか』とチーフ演出の吉川(久岳)さんに相談したんですが、『真ん中から湧き上がるのを撮りたい』ということで」(山下氏) そこから、味噌汁を寒天で固めて真ん中だけくり抜いてみたりとさまざまな試行錯誤が続き、最終的に、真ん中だけピンポイントに熱を加えるほうが中央部分の味噌が上がってくるのではないかという話になった。 「ただ、真ん中だけを熱するにはビーカーよりも大きいサイズの透明な入れ物が必要ということになり、色々探した結果、中国にガラス製の鍋があったのでそれを使おうということになりました。でも発注して2週間経っても届かず、3週間後にようやく届いたものの、開けてみたら鍋が割れていて。それで吉川さんが『もうビーカーで熱して端から上がってくるのを撮るしか無いんじゃない?』と言って、いろいろやった挙句、スタート地点に戻ったんです(苦笑)」 振り出しに戻ったのは、クランクイン3日前のこと。実はこのとき、山下氏と吉川氏は大喧嘩していた。その様子を見ていた制作統括の橋立聖史氏はこう振り返る。 「40歳過ぎた大人が味噌汁で喧嘩しているわけですよ(笑)。結局、その日は全くうまくいきませんでした。ドラマの制作をずっとやっていますが、チーフ監督(吉川氏)とチーフ助監督(山下氏)が味噌汁で喧嘩するのを初めてみました。 1人が『もうこの作品降りる!』と宣言するところまでいきましたから。味噌汁で普通、そんな喧嘩しないだろうと。周りのスタッフもみんな『味噌汁でいったい何やってるんだろう』と騒然となりました(笑)。これが作品の一番の危機だったと思います」