【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI マイルドな乗り味に改良 悔やまれるMT不在
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
8代目ゴルフGTIは、硬い乗り心地のハードコアなキャラクターが困惑を生み不評だった。ホットハッチとしてはボーイズレーサー的ではないのがゴルフGTIの立ち位置だったので、このチューニングはらしくないと思われたのだ。 バージョン8.5へのアップデートにあたり、フォルクスワーゲンは大掛かりなサスペンションの変更に言及していない。もっとも、PR部門が広報車両のほとんどをアダプティブダンパー装着車としたのは賢明な選択だ。 フォルクスワーゲンのアダプティブダンパーがいつもそうであるように、スライダーによる調整は15段階もある。隣り合うセッティング同士の差はかなり小さいものの、有意義な変化を重ねるようになっていて、それを用いたファインチューニングは、ダイナミクス担当エンジニアになったような気分を味わえる。 もっともソフトにすると、GTIの乗り心地はホットハッチに予想するより高級感あるものになる。ただし、ホイールは見栄えはいいが路面の穴やジョイントでつまずきを見せるオプションの19インチより、標準仕様の18インチを選びたい。 235幅のブリヂストン・ポテンザは、かなりロードノイズを発生する。113km/h巡航での室内騒音は、フォード・フォーカスSTより1dBA大きかった。 もし、ホットハッチの持つべき要素をひとつ挙げるなら、それはファン・トゥ・ドライブだ。しかし、その点でゴルフGTIは苦戦している。その理由は悪癖の存在ではなく、美点の不足にある。 アダプティブダンパーは、もっともソフトなセッティングではある程度ふわついた動きが出るものの、ハード方向へ数段階寄せると、曲がりくねったB級道路を飛ばしても取り組めるだけのボディコントロールを得られる。英国によくみられるバンピーな道では乗り心地がかなり過敏なので、われわれは調整を下半分に留めておきたい。 ステアリングは精確で、ロックトゥロックは1.9回転しかないが、ひどくナーバスではない。グリップとターンインの機敏さは十分以上で、ESCをスポーツモードにすれば、公道上ではクイックなギア比もまったく気にならなくなる。 要するに、GTIは公道を完璧かつ確実に走れるクルマだ。しかし、それは通常のゴルフにもできること。むしろ、ステアリングギア比のスローなレーシーでない仕様のほうが、よりなめらかで連続的だ。そして、もしもESCが切替式でなかったなら、もっとスロットルでの調整が効いたはずだ。グリップや速さよりもクルマとの一体感を重視するなら、1.5TSIのほうが楽しめる。アダプティブダンパーと18インチホイールの組み合わせなら、当然ながらもっとコンフォート志向になる。