「部下の手柄は俺のもの!」評価も報奨金も横取りするモンスター上司の末路とは
新しくやってきた上司は、札幌営業所にいたときに営業所全体の売り上げをほぼ1人で上げていたというすごい営業マン。同行した部下たちは「ちょっと話をしただけで追加注文が取れるなんてまるで魔術師だ」と感嘆した。しかしどうもおかしい。もしかして彼は、部下の手柄をすべて横取りして独り占めしているんじゃないのか?不審に思った部下が調べてみると……。(社会保険労務士 木村政美) <甲社概要> 精密機械部品を扱う専門商社で、従業員数300人。都内の本社のほかに札幌、大阪、名古屋など全国8カ所に営業所がある。 <登場人物> A:本社営業課主任、30歳。 B:営業課長でAの上司。今年6月札幌営業所から転勤してきた。35歳。 C:専務兼営業本部長。営業だけではなく、人事・総務の責任者でもある。 D:Aと同じチームで働く後輩、28歳。 E:甲社の顧問社労士 ● 札幌からやってきたデキる男、B課長 本社営業課は首都圏を活動エリアとし、営業課長を除く20名のメンバーは担当地域ごとに4チームに分かれ、チームごとに主任1名を置いている。Aは2年前から神奈川県と山梨県を担当するチームの主任として仕事に邁進(まいしん)していた。 今年5月、前任の営業課長が実家の家業を継ぐために退職し、後任として6月からB課長が赴任した。B課長は札幌営業所の主任時代、営業所全体の売り上げをほぼ1人で上げていたという実績を持つ優秀な営業マンで、その活躍を認めたC専務から本社の営業課長に大抜擢されたのだ。 6月上旬。C専務から課長としての業務引き継ぎを受けたB課長は、その後「あいさつまわり」と称し、2カ月の間、課全体で400件ある取引先の全部を担当メンバーに同行する形で訪問した。その際、商品の注文や新製品の紹介などはメンバーに任せ、説明が不足していたり、追加注文につながりそうな雰囲気を察知すると、その場でフォローを入れたりした。同行したメンバーたちは口々に「B課長はすごい。ちょっと話をしただけで追加注文が取れるなんてまるで魔術師だ」と感嘆した。しかし……。