「部下の手柄は俺のもの!」評価も報奨金も横取りするモンスター上司の末路とは
Aの告発を聞いたC専務は、ショックで頭が混乱してしまった。さらに専務室に戻ると営業課の若手社員3人が待ち構えており、それぞれから 「報奨一時金をください」 「B課長に訴えたら『そんなの知らない』って言われました。どういうことですか」 と詰め寄られた。 「A君の話は本当だったんだ。じゃあどうすればいいんだ?E社労士に聞いてみよう」 C専務はE社労士に連絡し、明日専務室を訪ねてほしいと頼んだ。 ● C専務がまずやるべきこととは? 翌日の夕方、C専務はB課長が行った一連の詳細を話し終えると、E社労士に尋ねた。 「私はいまだにB課長がしていたことが信じられない。今までそんな上司はいなかった。でも本当ならどうすればいいんでしょうか?」 「まずC専務にやっていただきたいのは、B課長を含むメンバー全員と個人面談を行い、実態を把握することです」 「しかしB課長は『部下の手柄を横取りしていない』と否定するかもしれません」 「その可能性はあります。中にはクロージングに同席すれば自分の業績だと思う上司もいますからね」 「早速、明日から面談を始めます。1週間後、また来てもらえますか?」
● 管理職の役割とは 1週間後、やってきたE社労士に、C専務は肩を落としながら言った。 「メンバー全員の個人面談を、ついさっき終えたところです。10月に支給されるはずの報奨一時金が不支給のメンバーが7名、11月支給予定が3名いました。全員、B課長が自分の業績として報告してきた新規契約と一致していました」 「B課長の反応は?」 「Eさんの見立て通り、新規取引先の契約はクロージングに立ち会い、フォローした自分の業績だと言い張り、報奨一時金も返すつもりはなさそうです」 「管理職の仕事は、会社の掲げた目標を達成するための労務管理を行う、会社の人材となるべく部下を育成することです。B課長は自分の業績を上げることだけを考えて、営業課長としての職務を果たしていないようです」 <管理職の役割> ○ 経営層の考えや企業目標などについて部下に伝達し、その内容を踏まえた上で部署内の明確な目標を設定、部署が一丸となって業務に取り組めるようにまとめる ○ 部署内で効率よく業務をするために部下に仕事の割り振りを行い、個々の状況を適宜確認しながら管理、指導する ○ 職場内のコミュニケーションを円滑にする、部下のモチベーションUPに努めるなど職場環境を整える ○ 顧客や取引先との関係構築を図る ○ 部下の仕事に対して責任を負い、仕事上のトラブルや課題を解決する C専務はうなった。 「うーん……。B君には課長としての自覚が足りないということですね。彼に自覚を持たせるにはどうしたらいいですか?」 「管理職の責務や心構えなどを学んでもらえるような研修を、会社命令で受講させるのも、一つの方法です」 「しかしその前に、彼をこのまま営業課長として残していいものかどうか……。そもそも営業マンなので報奨一時金の支給基準は知っていたはずだし、給与規程にも書いてあります。課長の引き継ぎ時にも部下の実績報告はきちんとするように説明しました」 「だとすると、確信犯で部下の業績を横取りして自らの実績にしたということになり、問題です。このままだとB課長は、本来Aさんらに支給されるべき報奨一時金やこれから支給されるであろう賞与の上乗せ分を不当に受け取ることになります。就業規則の記載内容や行為の悪質性、繰り返しの有無などを勘案し、処遇をどうするかを考えるべきでしょう」