船井電機を突然解雇の550人、再就職先決定は半数以下か…東京地裁は親会社に資産の保全命令
AV機器メーカー・船井電機(大阪府大東市)が破産手続きの開始決定を受けてから、24日で2か月を迎える。解雇された社員のうち再就職先が決まったのは、半数以下にとどまるとみられる。元社員向けの求人では前職時より給与水準が低いケースが多く、元社員たちは厳しい年の瀬を迎えている。(杉山正樹) 【写真】「元社員の皆さまへ 10月24日の説明会でもお知らせした通り」…船井電機の元社員に届いた、未払い賃金の手続きに関するメール
12月上旬、寒風が吹き付ける中、船井電機がある地域を管轄するハローワーク門真(大阪府門真市)から、失業保険や転職支援の手続きを終えた元社員たちが出てきた。元社員たちは近くの喫煙所などに集まり、情報交換などをしていた。表情はいずれも険しい。
50歳代の男性は、複数の会社に応募したものの、不採用が続いている。船井時代と比べ、年収が数百万円ほど下がるケースが大半だといい、「通常の転職と違い、解雇なので足元を見られていると感じる」と嘆く。船井電機からは冬の賞与の支給はない。高校生の子どもや住宅ローンを抱える中、「厳しい年越しになる」と肩を落とした。
AV機器の技術者だったという別の50歳代の男性は、何とか事務職で再就職が決まったといい、「もうテレビは作れないが、ほっとしている」と話した。だが、同じ部署のメンバーでは半数が再就職先が決まっておらず、「年齢のハードルが高い」とこぼした。
即日解雇
船井電機は、主力のテレビの販売不振や事業多角化の失敗などで資金繰りが悪化し、創業家系の取締役が10月24日に、取締役会の議決を経ない準自己破産を申し立てた。同日、開始決定を受け、約550人の社員はその直後に突然、解雇を言い渡された。
労働基準法では、少なくとも30日前に解雇予告の必要があるが、事前の予告はなかった。まだ支払われていない10月分の給与については、来年1月にも振り込まれることになった。
労基法では、即日解雇の場合、「解雇予告手当」として30日分以上の平均賃金を支払う必要があるが、これまでに案内はないままだ。
「ブランド残して」
行政による支援も実施されている。ハローワーク門真では10月29日から、元社員の採用を受け入れる企業を募集し、11月22日までに1500社から計3500件の応募があった。しかし、大阪労働局管内で求職登録をした約330人の元社員で再就職先が決まったのは、「半分にも届かない」(大阪労働局)水準だという。