称賛を集める「多様性の描き方」とは? 映画『モアナと伝説の海2』評価レビュー。今、続編が作られたことの意義を考察
海に選ばれた少女・モアナが繰り広げる冒険を描いた映画『モアナと伝説の海2』が公開中だ。今回は、2017年に日本で公開された前作から3年後が舞台となった本作のレビューをお届け。激化するアクションや成長したモアナの姿など、本作の魅力や見どころに迫る。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】(文・島晃一) 【写真】モアナ&マウイ達の冒険を堪能できる貴重な未公開カットはこちら。映画『モアナと伝説の海2』劇中カット一覧
モアナが描いた新たなヒロイン像
アメリカでは、公開5日間の興行成績で、映画史上最高記録を打ち立てたディズニーのアニメ映画最新作『モアナと伝説の海2』。ここ日本でも、オープニングの興行収入が2024年の洋画作品トップになるなど、前作以上のヒットになっている。 前作『モアナと伝説の海』(2017年)は、ポリネシアの島と海を背景に、16歳のヒロイン、モアナ(アウリイ・クラヴァーリョ)と半神半人の英雄マウイ(ドウェイン・ジョンソン)の冒険を描いた作品だ。 『リトル・マーメイド』(1989年)や『アラジン』(1992)といったディズニーを代表する映画を手がけたジョン・マスカーとロン・クレメンツのタッグが監督をつとめ、興行的にも批評的にも成功をおさめた。
モアナとマウイのバディ関係
『モアナと伝説の海』1作目は画期的だった。ポリネシアの神話や文化にインスパイアされた物語、海にこだわった流麗かつ美しいアニメーション、ハワイ語やタヒチ語のバージョンも作られた「How Far I'll Go」など、リン=マニュエル・ミランダが生み出す歌の数々。 そして、なんと言っても、これまでのディズニー・プリンセス像を刷新するようなモアナのキャラクター造形だろう。ディズニーで初めてポリネシア系のヒロインが誕生したというだけではない。これまでの手足が長く細い主人公たちとは違い、少し筋肉質にも見える体型は斬新だった。 また、モアナはマウイとの冒険を通じて自己やルーツを見つめ成長していくが、2人の間にロマンスは起こらないというのも特筆すべきだ。海を操る能力を持ち、船に乗って大海原へ繰り出すモアナは、プリンセスというよりはヒーローのようであり、半神マウイとの関係性はバディムービーのようでもあった。配役含め、いくつもの点において、不自然ではない仕方で多様性を広げるこの映画は、ポリティカル・コレクトネス、所謂ポリコレの観点においても賞賛の声が上がった。