中村米吉、結婚という人生の節目を迎え、これまで以上に真摯に芸と向き合う決意【歌舞伎沼への誘い】
「お梶は色気もなくちゃいけないし、機転がきかないといけないお役」って米吉さんにぴったりじゃないですか!!「団七と徳兵衛、二人のケンカを止めるシーンは、かならず筋書にも掲載される有名な場面。美しい1枚の絵になるようにきちんと勤めたいです」。
小僧 昨年、尾上右近さんの自主公演『研の會』で、お梶は一度、勤められていますよね。 米吉 はい。そのときは、団七が右近くんで、徳兵衛が(坂東)巳之助兄さんでしたから、同世代の二人の間に入ってのお芝居でしたけれど、今回は、一つ上の世代のお兄さん方の中に入って、お梶をさせていただくことになります。 3月歌舞伎座でもお二人で『寺子屋』をされていて、今の歌舞伎を引っ張っていっているお二方ですから、その間に割って入れるお梶でないといけない。愛之助兄さんの女房らしく見えることを大事にしたいですね。 小僧 これまで米吉さんはかわいらしいお役が多かったから、どんなお梶になるのか楽しみです!! 米吉 ちなみにお二人が間違えていたお辰は、愛之助兄さんが二役で勤められます。愛之助兄さんも松竹座や博多座では、団七をやっていらっしゃるけれど、歌舞伎座では初めてなんじゃないでしょうか。上方のお芝居で、上方の兄さんがなさるわけですから、上方の風情あふれる舞台になると思うので、私も上方の空気感というものを少しでも出せるように勉強させていただきたいと思っています。 部長 お父さまの歌六さんは、今回は、釣船三婦役でご出演されますね。 米吉 三婦は、父が得意としているお役の中でも大好きなお役のひとつなんですよ。団七の世話人みたいな人で、お年寄りの役だけど、ただの枯れている老人ではなくて、ケンカも強いし、色気もあってかっこいいんです。久しぶりに父の三婦が見られるのも非常に楽しみですね。 「父の曽祖父の三代目中村歌六が、昔、『夏祭』で三婦をやったときの浴衣がうちに残っているんですよ。寸法が全然違うので着られないんですけれどね。肩から胸のところに家の紋が入っている、いわゆる“首抜き”という柄の浴衣で、今回、父が三婦を演じるにあたって、同じように首抜きで浴衣を新しく作るような話も聞きました」。舞台での歌六さんの衣裳にも注目!