月ノ美兎のイズムを体現した“異形のMV” 「てんやわんや、夏。」監督・UBUNAが語る誕生秘話
“バカバカしいこと”を真面目にやっていきたい
――作品を撮影するときに、もっとも大切にしていること、心に留めていることを教えてください。 UBUNA:物作りする時は、童心を忘れないようにしたいなと思っています。小学2年生の頃に映画を見て今の自分がありますし、そういう子供の頃の感動は、大きな原動力になると思うんです。実際シナリオ作りをする時とかも、脚本家やPOPBORNのチームで、昔起きた恥ずかしい話とか、初恋の話とかをするんです。そうやって、みんなで話し合いながら作っていくのが一番楽しい瞬間だなと思っていて。 まあ、そうやって楽しくディスカッションして作ったものをいざ映像にするのは……「なんでこんな設定にしちゃったんだろう」みたいに思う瞬間もあったりしますけど(笑)。でも、結局バカバカしいことを真剣にやっている瞬間が楽しいんですよね。 ――POPBORNのみなさんは「こういう映像を撮りたい」というスタイルが似ていらっしゃるのでしょうか? UBUNA:いえ、そういうわけではないです。みんな好きな方向性はバラバラです。私はファンタジーとか子どもが出てくる映画やコメディ作品が好きですし、社長はものすごい歴史オタクで、戦国モノとか大河ドラマが好きですし、他方ではヒップホップとかストリート系が好きな人もいます。みんなバラバラですけど、この「みんな違う方向を向いている」のがいいんですよ。 ――逆に、そういったスタイルで苦悩することはありますか? UBUNA:真面目な話が書けないなって。女性特有の悩みだったりとか、今の年齢でしか描けないような、“自分の等身大を描いた作品”を作りませんか、とか言われることもあるんですが……。そういう、自分の人生のテーマを掘り下げていくと、どんどん暗くなってしまって。 自主制作で映画を作っていた時は、そういう自分のディープなところを深掘りした作品が多かったんですけど、それも暗くて。それはそれで、その当時の自分にしか気づけなかった悩みを形にできたので良かったと思いつつ、でも今作りたいのは「人を明るくさせる映像」なので。できれば、コメディ寄りにシフトチェンジしていきたいところです。 ――今後、どんな映画を撮ってみたいですか? UBUNA:いま申し上げたようなコメディやSF作品がやりたいです。あと、個人的にオカルトがすごい好きなので、そういう作品も作りたいですね。「こういう世界があるかもしれない」という妄想を膨らませるのが楽しいんです。 映像作りをする中で、ダーウィンとかニュートンとかガリレオとかのように、「当たり前の常識」を別の角度から深堀りするきっかけを与えるようなことがしたいと思ったことがあるんです。映画やアートは見ている人の思考の幅を広げる力があると思っていて。 たとえば映画の場合、自分とは全く異なる人たちの独自の悩みや、その人たちが見ている世界を少しだけ覗き見できたりするので、その分見た人の視点が増えますよね。『てんやわんや、夏。』は少し違うかもしれませんがあの作品だって「おっさんたちって可愛くね?」みたいな視点が芽生えるかもしれませんよね(笑)。 ――映像だからこそできる力ですね。 UBUNA:やっぱり「悩みを抱えてる人もいるんだよ」といって難しい本を渡されても、なんとなく敬遠しちゃったりとか、毛嫌いする人もいると思うんです。それを切り開く最初の窓口になれたらいいなと思っています。 ――POPBORNで活動していく中で、今後やってみたい動きっていうのはありますか? UBUNA:私も含めて、POPBORNのメンバーは変わり者が多いので、そういう人たちが輝けるような物作りができる環境にしたいです。映画、ドラマも含めて、オリジナル企画をどんどんやっていける会社でありたいし、みんながアイデアを出してディスカッションできる場を作って、沢山の視点から唯一無二の企画を考えられるような会社にしたいですね。
たまごまご