精密に進化した羽生の4回転ループは平昌五輪の武器になる!
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯男子シングルで、ソチ五輪金メダリストの羽生結弦(21、ANA)が、計301.47点の今季世界最高得点で連覇を果たした。 では、羽生の何がどう凄かったのか? 2位に終わったスケート・カナダと何がどう違ったのか? 元全日本2位で、現在、ジュニア世代の育成に尽力している中庭健介さんは、こう分析した。 「2位に終わったスケート・カナダの羽生選手の4回転ループは、どちらかというと思い切り良く跳ぶことだけを考えた、野球で言えば160キロ級の剛速球でしたが、今回は150キロ台で、しかも細かいコントロールを加えたような、丁寧なジャンプになっていました。ジャンプの入りの動きから細かく精密になっていました。ショートではステップアウト、フリーでは空中での軸が若干ゆがみ、外れそうになりましたが、こらえました。おそらく感覚の中で、思い切りと、正確、丁寧にまとめることの調整がつき始めたのだと思います。 ループは右足1本で跳び、右足1本で着地するジャンプのため、なかなか勢いをつけにくいのが特徴ですが、例えば腕の軌道や右足のアウトエッジで描く弧の大きさを一定にさせるなど、どこに意識をおけばいいのかというコツや極意のようなものをつかんだかのように見えました。間違いなく来シーズンの平昌五輪に向けてのプラス材料となるでしょう」 ショート、フリーの冒頭に、それぞれ今シーズンから挑戦している4回転ループを組み込んだ。ショートではステップアウトしたが、フリーでは見事に着氷を決め、国内初成功を果たした。フリーで4つ入れ込んだ4回転ジャンプは、後半の最初に組んだ4回転サルコーは転倒したが、残り3つを成功させた。 中庭さんは、「ジャンプに関する丁寧、精密と言うキーワードは、ショートで2本、フリーで4本入れたすべての4回転に当てはまるものでした。昨年よりさらに難しくなったプログラムなのに、ジャンプに綿密な磨きがかかっている部分が、スケート・カナダからの大きな進化、成長ポイントです。足の故障回復が不安視されていましたが、しっかりと滑り込んできた跡がうかがえました。そのあたりのコンディショニングの調整能力も高くなってきたのでしょう」と、評価した。 コンビネーションジャンプでは、トリプルがダブルになってしまうミスもあったが、中庭さんは、「それらのミスがなければというのが、羽生選手にとって次へのノビシロであり、モチベーションにつながっていると思います。今回も、ミスがなければ、彼が持つ世界最高得点に迫るところまでいったでしょう。その意味で、このNHK杯は、次のGPファイナルに非常にうまくつながっていくと思います」と見ている。