社会保険料「106万円の壁」撤廃が実現したらどうなる? “裏ワザ”を使った働き控えが加速し、人手不足で社会全体の負担が膨らむ恐れ
今後の年金改革で注目されるのが、2024年の総選挙以降、話題となっている「103万円の壁」だ。
年収103万円を超えると所得税・住民税がかかるようになるため、それを超えないための「働き控え」をする人が多かったが、12月20日に決定した与党税制改正大綱では、2025年からこの「壁」を「123万円」に引き上げることが明記された。「年金博士」ことブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんが解説する。 「基本的に『103万円の壁』の対象となるのは、夫や親に扶養されている一部の主婦と、学生やフリーターです。また、税金が発生するといっても、所得税が“壁を超えた分の金額の5%”、住民税が“壁を超えた分の10%”なので、家計に打撃を与えるほど大きな影響はないといえます」(北村さん・以下同) むしろ、気にするべきなのは社会保険料が発生する「106万円の壁」だ。厚生労働省は2024年12月、社会保障審議会で、この要件を撤廃する案を提出した。もし撤廃が実現すれば、すべての厚生年金加入者に大きな影響が出る恐れがある。
すべての厚生年金加入者に影響が出る恐れ
「現在、加入の対象となっているのは“従業員数51人以上の事業所で、週20時間以上労働”で年間106万円以上の収入を得るパートやアルバイト。『壁』が撤廃されれば、『週20時間以上』という条件だけが残るため、社会保険料を払いたくないがために“裏ワザ”を使う人が増える可能性があります。 具体的には、複数のパート先で“19時間以内”でしか働かないようにしたり、タイミーなどアプリを使ったスキマバイトをいくつもかけもちしたりする。あるいは、厚生年金の適用を受けない小さな個人事業主のところでアルバイトをする手もある。 すると、各事業所では人手不足が加速し、厚生年金保険料の会社負担分が劇的に増え、社会全体の負担がふくらむ。そうしたリスクを払拭できない以上、改悪と言わざるを得ません」
さらに130万円を超えてしまうと、扶養を外れてしまって手取りが大きく減るので要注意。 「一方、2023年10月からは『年収の壁・支援強化パッケージ』が始まり、勤務先によってはうっかり壁を超えてしまっても扶養から外れなくていい場合があります。繁忙期や人手不足で勤務時間の増加を求められた場合は確認してみましょう」 どの壁をどう超えるか。しっかりとした収入試算をしたうえで決めなければいけない。 ※女性セブン2025年1月16・23日号