美しすぎる中世写本が勢ぞろい! 彩飾芸術の“美の世界”を楽しめる展覧会
東京・上野の国立西洋美術館で企画展「内藤コレクション 写本 ― いとも優雅なる中世の小宇宙」が開催中です。中世ヨーロッパで普及した美しい写本が集まる展覧会の見どころをご紹介します! 【画像】不倫を扱ったものも!? 美しい中世写本の数々はコチラ。
美しい写本が勢ぞろい!
【女子的アートナビ】vol. 340 本展では、国立西洋美術館が所蔵する国内最大級の写本コレクション「内藤コレクション」を中心に約150点の作品をまとめて紹介。同館では初となる大規模な写本の展覧会です。 写本とは、手で書き写された本のこと。印刷技術がなかった時代、中世ヨーロッパでは写本で知識が人々の間に広がっていきました。 当時、羊や子牛などの皮を加工してつくられた紙に一文字ずつ筆写された写本は贅沢品のひとつ。美しく装飾された写本には、その時代の美意識が詰まっていました。 本展では、聖書や詩編集、聖歌集などの華やかな写本を堪能できます。
見どころは、美しいミニアチュール!
展示は9章構成。最初の章では「聖書」の写本が並んでいます。写本といっても、展示されているのは「本」の形ではなく、1枚の紙。写本では、この紙のことをリーフまたは零葉(れいよう)といいます。 筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史先生は、もともとの写本から切り離されたリーフを1枚1枚ヨーロッパなどで集め、コレクションを築き上げていきました。そしてそれらを一括で2015年度に国立西洋美術館へ寄贈。「内藤コレクション」は国内美術館最大級の写本コレクションです。 写本の楽しみ方について、国立西洋美術館学芸課長の渡辺晋輔さんは次のように教えてくれました。 「書かれている文字は小さいですが、文頭の飾り文字であるイニシャルには手の込んだ装飾がなされています。イニシャルのなかでも一番きれいに書かれている部分は、重要な段落という目印にもなっています。また、余白部分に大変美しいミニアチュール(挿絵)が描かれているものもありますので、ぜひその部分もご覧ください」
最先端のアートが盛り込まれている!
続いては、4章「ミサのための写本」へ。 聖書の写本は、持ち運びするため小さなサイズで作られていましたが、「聖歌集」の写本は比較的大きなタイプになっています。歌を歌うときは何人かで一緒に見るため、大判で作られたそうです。 また、写本には当時の最先端のアートが盛り込まれています。 例えば、イタリアのフェラーラで作られた写本には、ルネサンス時代に生まれた新しい技法で人体が描かれています。写本は小さいながらも第一級品の美術品として人気が高く、昔から多くの人がコレクションしていました。