58歳会社員、年金の「繰下げ受給」を考えています。厚生年金だけ「70歳」から受け取ると毎月「4万円」増えるって本当ですか?
人生100年時代と呼ばれて久しい昨今。海外のある研究によれば、「2007年に日本で生まれた子どもの半数が107歳より長く生きる」と推計されています。元気に生きることができる期間が延びるのに伴い、60歳を過ぎても働き続ける人が増えるのではないでしょうか。 高齢になっても働く場合、安全にかつ効率的に資金を蓄える方法として、年金の繰下げ受給は有効な選択肢です。本記事で、年金の繰下げ受給でどれだけお金が増えるかを検証してみましょう。
厚生年金を5年繰り下げれば毎月4万円受給額アップ
年金の受給タイミングを大別すると、65歳を基準としてそれよりも早く受給を開始する「繰上げ受給」と、65歳以降に受給開始する「繰下げ受給」の2つに分かれます。 「繰上げ受給」の場合は、原則として老齢厚生年金と老齢基礎年金を同時に繰上げ請求する必要がありますが、「繰下げ受給」の場合はどちらか一方のみ受給開始時期を遅らせたり、それぞれ別の時期にずらしたりすることが可能です。 図表1のとおり繰上げ受給では、繰り上げした月数に応じて受給額が1ヶ月につき0.4%ずつ減額されます。一方で繰下げ受給では、繰り下げた月数に応じて1ヶ月につき0.7%ずつ増額された金額で年金を受給できます。開始時期に応じた受給額は生涯変わることはありません。 図表1
日本年金機構 年金の繰上げ受給・年金の繰下げ受給を基に筆者作成 厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度)」によると、男性の老齢年金(基礎年金を含む)の平均年金月額は16万3380円でした。 また、2023年度の老齢基礎年金の満額は月額6万6250円(68歳以上の場合は月額6万6050円)となっています。1つのモデルケースとして、老齢年金の内訳を10万円が厚生年金、6万6250円を基礎年金とした場合、70歳まで繰下げ受給した概算結果が図表2です。 図表2
日本年金機構 年金の繰下げ受給を基に筆者作成 実際の計算はもう少し複雑ですが、仮に70歳まで5年間受給開始を繰下げた場合、平均的な受給額の人でも、厚生年金だけを繰り下げても毎月約4万円、基礎年金も併せて繰り下げれば毎月約7万円の受給額アップが見込めます。