「スピード練習? 全くやってないです。ウチは駅伝なんで」青学大“遅れてきたエース”の出雲区間賞で感じたそれでも“箱根駅伝の本命は青学”のワケ
「もうスピード練習なんか全くやってないです。ウチは駅伝なんで……毎週20kmとか距離走も入りますし」 【写真で比較】「えっ、いまと全然違う…」4年前、高校生時代の“坊主頭”の鶴川正也といまの「モデル顔負け」スタイルのイケメン姿…日本選手権&出雲駅伝での爆走シーンに原監督との談笑シーンも見る 学生駅伝シーズンの到来を告げる出雲駅伝での走りを見て、頭を過ったのはそんな言葉だった。語っていたのは、1区を走って区間賞を獲得した青学大4年生の鶴川正也だ。 実はこの話、駅伝シーズンに入ってからの談話ではない。6月に新潟で開催された日本選手権5000mで、鶴川が4位に食い込んだ直後の談話である。 13分18秒51の屋外日本人学生新記録(当時)をマークした選手の口から出たとは思えない言葉ではある。日本最高峰の舞台にも関わらず、コンディションを合わせることなく、それでいてこれほど高水準の記録を叩き出したというのだ。
雌伏の時を経て、大学駅伝初の区間賞
この出雲駅伝の走りで、鶴川はトラックだけではない駅伝での強さも見せることになった。トラックシーズン同様、短い距離の出雲路でもほぼそれに対応する練習ナシで区間賞を獲得してみせた。 「絶対に優勝するつもりで、少しでも後ろと差を開けるように全力で行きました」 そう本人がレース後に語ったように、道中、先頭を引っ張ったIVリーグ選抜のキーラン・トゥンティベイトや国学院大の青木瑠郁(3年)の後ろで最後まで力を溜め、一瞬のスパートで先頭に躍り出る。後続はその切れ味に太刀打ちできず、どんどんと離されていく。 そんな1区での鶴川の走りを見て思い出したのは、九州学院時代に都大路を疾走する姿だ。 2年生の頃から2年連続でエース区間の1区10kmを任された。2年時は区間3位、3年時は今回の出雲駅伝と同様の強烈なスパートで最後まで競り合った尾崎健斗(浜松商高→明治大)を振り切り、区間賞を獲得している。長い高校駅伝の歴史の中で、エース区間の1区を2度、28分台で走った日本人ランナーは鶴川だけだ。 それほどの安定感と勝負強さを見せていた鶴川だが、大学入学後は苦しんだ。 度重なる故障に悩まされ、大学長距離界最大の晴れ舞台である箱根駅伝はこれまで一度も走ることができていない。出雲路でも、ようやく初出走となった昨年はアンカーの6区で区間7位と失速していた。 「これまで3年間がうまくいかなすぎて……でも、その経験がすごく活きていて。最近、本当に思うんですけど、やっぱり走れていることってこんなに幸せで、当たり前のことじゃないんだなと」
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