日本がカンボジアにデジタル分野で支援「ネット犯罪の温床」効果は?
詐欺グループは、日本に住む被害者に対し、日本の携帯電話会社を名乗って「有料のウェブサイトの支払いを滞納している」とニセのメッセージを送っていた。そして、電子マネーをだまし取ろうとしたという。警察庁によると、昨年2023年の1年間で、カンボジアなど4か国で日本人69人が特殊詐欺を働いたとして、逮捕された。 これは驚くべきニュースだろう。国連は昨年「カンボジアのオンライン詐欺拠点で、意に反して働かされている被害者が、10万人を超える」と発表した。働かされている被害者は主に若者で、日本人を含めた外国人も目立つ。マネーロンダリング、仮想通貨に関する詐欺、それにロマンス詐欺などのオンライン詐欺業務に強制されていたという。 もう一つ。ASEAN=東南アジア諸国連合は今年3月、プノンペンで、オンライン詐欺防止に関する作業部会を初めて開催した。国境を越えて各国に広がるオンライン犯罪の防止策について話し合ったが、カンボジアで作業部会が開かれた意味は、この国が犯罪の拠点になっており、なんとかしないといけないという思いの証でもある。 ■デジタル分野支援で中国をけん制 カンボジアの重要度といえば、そのカンボジアと緊密な関係にある、中国をけん制するためにも、日本もさまざまなアプローチを続けている。 冒頭の話に戻る。日本がカンボジアのデジタル分野で協力していく、という取り組みは、カンボジアの政府や企業のためだけではない。一般の市民を含め、インターネットを使った日々の活動を向上させていくために欠かせない。このような取り組みがカンボジア国内で浸透していけば、国外へ向けたネット犯罪にも効果があるはずだ。 橋や道路などの建設と同様、これも重要なインフラ整備だ。同時に、中国が影響力を広げようとしているのを視野に入れながら、日本はこの分野で支援していこうというものだろう。 日本では猛暑が続くなか、屋内にいる時間が多い人もいる。家やオフィスにいて、パソコンに、内容が疑わしいメールが届くこともあるだろう。発信元が海外の場合も少なくない。パソコンやスマホに向き合うことも多いだけに、この夏、要注意だ。
■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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