湖池屋の高級ポテチ戦略 「ジリ貧スナック市場」からの脱却
40代以降の購入者が増加
一方で、周囲から猛反対を受けながらも、湖池屋がプレミアム商品の販売に踏み切ったのは確かな勝算があったからだ。 それが15年当時、チョコレートの高級化が進んでいたことだ。2010年半ばは、カカオを多く配合したプレミアムなダークチョコレートが売れていた時期だった。 この状況を見ていた湖池屋は、ポテトチップスでも同じような流れをつくれないかと期待した。チョコレートに比べ、ポテトチップスのようなスナック類はジャンキーなイメージがあり、プレミアムのイメージとは縁遠かった。しかし、だからこそいち早く品質重視の商品を展開すれば、プレミアム市場を創造できると考えたのだ。 加えて、かつてのポテトチップスは、嗜好品として売れていたという事実も同社の背中を押した。 湖池屋が初めてポテトチップスを発売した1962年当時、ポテトチップスはレストランなどの飲食店でしか食べられない珍しい食べ物だったという。 その後、同社が現在に続くポテトチップスを開発、量産体制が整い、競合も増え、冒頭に挙げたようなコストパフォーマンスのいい身近な菓子となる。この歴史も踏まえ、今こそ、嗜好品としてポテトチップスに原点回帰するタイミングだと捉えた。 こうして開発されたプライドポテトシリーズは、前述の通り好評を博した。国産にこだわる品質向上や、食塩不使用の健康志向、個食のニーズなどに合致。シリーズ誕生以前に比べて、湖池屋全体の購買層は40代が大幅に増加し、これまでには見られなかった70代の流入も確認できた。 さらに慢性的に続く物価高も、湖池屋にとってはプラスに働いた。 昨今では、水やティッシュペーパーなどの生活必需品は倹約するも、その反動で酒やコーヒーといった嗜好品にはお金をかける、いわゆる“メリハリ消費”が浸透している。 この流れの中、これまで気軽に購入されていたポテトチップスも、コーヒーや酒と同じように嗜好品として見られる側面が強まっている。呼応するように、消費者の選定基準が厳しくなったことも、業界で一足はやくプレミアム路線を進んできた湖池屋に味方した。 「急激な物価高の影響により、外食するほどではないが、スーパーで150~200円のポテトチップスを買ってプチぜいたくしようと考える人が増えている」と志鎌氏。 今の時代、ファミリーレストランで食事にドリンクバーをつければ1500円はかかり、300円を超えるコンビニスイーツも多い。それに比べてポテトチップスはより“ハードルの低い嗜好品”として選ばれる傾向にあるというわけだ。