言うこと聞かないと「気合」。県史も認める佐渡金山の朝鮮人強制労働、その痕跡を歩く 世界遺産登録へ「負の歴史」をどう説明するか
「言葉が分からず怖かったが、頭をなでられたことや、何杯もそばを食べていたのを覚えている」 鉱山労働者が集まる年に1度の行事では「朝鮮人労働者も出し物を披露していた」と話す。鉱山で事務職をしていた知人からは「仕事終わりの共同浴場の順番は、朝鮮人は最後にさせられていた」と聞いたと振り返った。 ▽「歴史を独断と偏見で捉えるな」 イコモスの勧告は「鉱業採掘が行われた全ての時期を通じた、全体の歴史を現場レベルで説明・展示すること」だ。説明展示は国際社会に通じる必要があるとの記述もある。小杉邦男さんは、これをチャンスと捉える。 「世界遺産は歴史がベース。独断と偏見で歴史を捉えては駄目だ。過ちがあったら、二度と繰り返さないように認識しなければ。負の歴史を清算するべきだ」 「世界遺産登録には賛成だけど、将来のために歴史を正しく認識し、整理しておかなきゃいけない」 ▽存否さえ答えない「半島労務者名簿」
三菱鉱業佐渡鉱山では、誰が働かされていたのか。「煙草配給台帳」以外に、労働者名簿はないのか。 戦後補償問題に取り組む市民団体「強制動員真相究明ネットワーク」(神戸市)の近代史研究者竹内康人さん(67)=浜松市=によると、三菱鉱業佐渡鉱山を引き継いだ三菱マテリアルの子会社「ゴールデン佐渡」が保有する「半島労務者名簿」がある。新潟県立文書館は、これをマイクロフィルムに撮影したものを所蔵しているという。 竹内さんが2023年4月に文書館に照会したところ、存在を認めた上で「非公開」との回答があった。そこで竹内さんが5月、佐渡鉱山関連資料を文書館に情報開示請求すると、今度は名簿の存在自体が「非開示」とされた。 ネットワークは今年6月、県に対し、「半島労務者名簿」を公開しないのは不当だとして、公開を求める要請書を送った。要請書は「名簿の存在は既に明らかで、隠すのは無理。名簿は佐渡鉱山の歴史を知るために欠かせない史料だ」としている。