シニア犬介護で感じたのは「日々の大切さ」 豆柴センパイとの時間は自分の一部に
100%介護に向き合いすぎない
センパイの介護をしながら、石黒さんは遠隔で父の介護も並行。身体の疲労を感じ、心が折れてしまいそうななかで、どのようにして精神を保っていたのか。 「難しいですけど、気分転換や心のよりどころは大事ですよね。私の場合は、趣味の俳句に助けられていて、介護中も月1回の句会への参加は死守していました。『介護』というと100%全力で向き合わざるを得ないという印象がありますが、全てを手放すのではなく、何か趣味があるなら細々とでも続けた方がいい。頑張りすぎずにできる範囲で、『自分の生活を残しておく』ことが大切だと思います」 介護中に作った俳句は、ほとんどがセンパイや父に関するもの。 「俳句は日常の中から生まれるものなので、それだけ真剣に向き合っていたということかな。いま振り返れば、こうして小さな記録として作品に残せたのはよかったと思っています」
最期は「センパイがどうしたいか」を指針に
センパイの介護生活、そしてお見送りのために、情報収集にも力を入れた。 「ただやみくもに情報を集めるのではなく、まず『センパイはどうしたいか、自分はどうしたいか』の大筋を決めてから、経験者にお話を伺ったり本を読んだりして、『この人はこうしたんだ』と参考にしていました。介護って本当に正解がなくて、その犬・その猫で何がベストかは個体差があります。情報を集める前に、自分なりの指針を決めておくことは意識していましたね」 なかでも看取(みと)りに関する実践的な知識は、作家の俵森朋子さんの『愛犬との幸せなさいごのために: 必ずくるお別れのときに後悔しない知識と心構え』(河出書房新社)を参考にしていたという。 「時々読み返しては、亡くなったら段ボールやドライアイスが必要なんだなと頭に入れていました。幸い、センパイが旅立ったのは1月の寒い日だったので、結局ドライアイスは不要でしたね。センパイの最期に向けて、心の準備をしていたことはありませんが、目の前のセンパイの変化を見て、『また一段、階段を登ったな』と感じていましたね。もちろん、その階段の先にあるのは『旅立ち』だということも無意識で分かってはいました」