大幅に動かした打線も機能した。開幕から不動の1番だった桑原に変え、トップバッターに神里を抜擢した。ここまで代打で6打席立ってヒットは1本。ことごとく期待を裏切ってきた。賭けとも言えるスタメン起用だが「相性とコーチの進言」で指揮官は決断したという。だが、神里は、野村とは昨年1打席、2年前も3打席立っただけでヒットはない。三浦監督の期待と信頼である。加えて倉本を入れるなど左打者を6人並べた。 　その神里が2打席目の3回に先頭打者アーチで先制点を奪う。 「手ごたえはあまりなかった。風のおかげ」と謙遜するが、野村の中心球である初球のツーシームを捉えた打球が右中間スタンドに飛び込んだ。 　センターの守備でも魅せた。4回の先頭の鈴木誠也の左中間を抜けていきそうな打球を飛びついてキャッチしたスーパープレー。本人いわく「野球を始めて以来、初めてのダイビングキャッチだった」そうである。連敗中に守れなかった「点を取った後に点を取られるな」の鉄則を守った。 　一人のミスを誰かがカバーする。 　ソト、オースティンがまだ揃わないチームが勝つには、三浦監督が、今季のスローガンに掲げた「結束」しかなかった。4回に宮崎が1号ソロ。不安な救援陣を考えると、どうしても追加点が欲しかった5回に、その場面がやってきた。代打の宮本は四球を選ぶと盗塁を成功した。無死二塁。だが、続く神里にはバントをさせなかった。神里は進塁打が打てずに三振。続く関根が一塁ゴロだったから、もし走者を三進させていれば、タイムリーなしに1点を奪えていた。だが、そのミスを救ったのが、開幕以来、存在感を示しているルーキーの牧だった。 　コルニエルの浮いた154キロのストレートを思い切り叩きつけて三遊間を破るタイムリーを放った。これで通算10打点。阪神のサンズを抜き単独で打点王争いのトップとなり、この日は、猛打賞で打率は4割に乗った。 　初のお立ち台に指名された牧は「長野県から来ました牧秀悟です」と挨拶。 「阪口が頑張っていてチームが勝てていない状況だったがチャンスだったので思い切っていった。前のバッターの人たちがチャンスを作ってくれて、後ろには佐野さん、宮崎さんがいるので凡打してもいいという気持ちで思い切っていけている。みなさんのおかげ。自信を持って1打席目から振れているし、このまま今後も続けていきたい」と堂々と語った。 　 三浦監督が言う。 「横浜一心。全員で勝ち取った白星だと思う」 　 　エスコバーも来日。これで外国人選手10人全員が揃った。今後は隔離期間を経て、ファームでの調整も必要になるが、三浦ベイスターズの臨戦態勢が整うのも時間の問題となっている。 　風格十分の頼もしいルーキーの牧は、ファンにこう約束した。 「長い負けが続いていたが、ここから勝つと思います。1年目でわかんないんですが（笑）。乗りに乗ったら止まらない。それがベイスターズだと思う」 　12球団で最も出遅れた三浦ベイスターズの反撃が始まる。